【みらいのかぞくプロジェクト】トークイベントに参加してきました!(藤澤)

2016/06/07

こんにちは、M2の藤澤空見子です。そろそろ梅雨の季節ですね。

5/29(日)に日本科学未来館にて開催された【みらいのかぞくプロジェクト トークイベント「あなたはどこまでやりますか?~ヒト受精卵へのゲノム編集を考える~」】に参加してきました!
このイベントは、タイトルの通り、最近話題になっている「ゲノム編集」を受精卵に対して用いることについて考えるという内容です。トークイベント前半は阿久津英憲先生・武藤香織先生による基調講演、後半はハンチントン病のご家族の立場のお話、またマルファン症候群の患者の立場からのお話を皮切りにして、一般の参加者を交えたディスカッションを行う、という構成でした。さらにトークイベント終了後には、グループに分かれて参加者同士で意見交換をしあう「特別ワークショップ」がありました。

阿久津先生の基調講演では、受精卵やゲノム編集の説明や、現段階で技術がどこまで進んでいるかというお話がありました。同じ「分化」の性質を持っていても、ES細胞などの幹細胞とは違い、受精卵は1つの個体になりうるという点が大きな特徴であるというお話の中で、細胞分裂の動画を見ながら改めて生命の神秘を感じました。同時に、受精卵のゲノムに手を加えるという行為の重大さや、治療法が見つかっていない疾患の治療に繋がる可能性について考えさせられました。武藤先生の基調講演では、受精卵を用いた研究に対する各国の規制状況、そして日本の学会や内閣府の生命倫理専門調査会の声明などを紹介してくださいました。加えて、ユネスコのヒトゲノムと人権に関する世界宣言の「象徴的な意味において、ヒトゲノムは、人類の遺産である。」というフレーズに言及しつつ、人の尊厳や生命倫理に関して問題提起をされていました。
ディスカッションで、遺伝性難病の当事者のお話や質疑応答を伺う中で特に印象的だったのは、ゲノム編集に対する多様な意見が出ていたことです。疾患に向き合って生きている立場の中でも、切実にニーズを訴える声もあれば、慎重に扱うべきだとする声もあり、社会としてどうゲノム編集(の受精卵への応用)を扱うべきかという結論を出すことを考えたとき、その実現の難しさを感じました。

「特別ワークショップ」では、5人前後のグループに分かれて議論を進めました。まずは「個人的に」どういう場合に使いたい/使いたくないと考えるかについて意見交換をし、次に「社会として」どう使っていけばよいかについてグループ内での合意形成を試みる、という流れでした。この合意形成がなかなか難しく、私のグループを含め、議論をまとめることができなかった場面もありました。社会利用を考える際の仮定条件によっては、私自身もなかなか意見が持てず(判断できず)に困惑したこともありましたし、グループ内で意見が真っ向から対立したシーンもありました。しかし、参加者の「なるほど!」と言わんばかりの反応を見たり、意見が飛び交う様子を見たりして、多様な意見が交わる場のおもしろさを実感しました。簡単に結論が出ないことだからこそ、議論し合う場の必要性があるのだということも同時に強く感じました。

研究をする上で、コンセンサス会議など科学技術について専門家と一般市民の方が対話をする場を設ける取り組みは聞いたことがありましたが、実際に参加するのは初めてでした。とてもおもしろく、そして考えさせられる機会となりました。

みらいのかぞくプロジェクトのトークイベントは、議題を変えて今後も続いていきますので、またブログでご紹介したいと思います!
後日、みらいのかぞくプロジェクト facebookページにて、より詳しい内容がアップされると思うので、ぜひチェックしてみてくださいね!

【参考:プログラム構成】

トークイベント
(13:00~15:00)
○基調講演①「ヒトの発生とゲノム編集」
 阿久津英憲氏(国立成育医療研究センター研究所 部長)
○基調講演②「『ヒト受精卵へのゲノム編集』の可能性と課題」
 武藤香織氏(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授)
○客席を交えたディスカッション
特別ワークショップ
(15:30~17:00)
トークイベントのディスカッションで出された論点をさらに深く考えるためのワークショップ

(M2・藤澤空見子)