第3回研究倫理を語る会は、国立がん研究センターで開催されます(2/10)

2017/11/20

平成30年2月10日(土)に「第3回研究倫理を語る会」を開催する運びとなりました。
今回は、国立がん研究センター新研究棟にて開催いたします。
詳しくは、公式サイトをご覧下さい。

多数のご参加をお待ちしております!

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2017年度第6回公共政策セミナー

2017/11/08

本日、2017年度、第6回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年11月8日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 高島響子(東京大学医科学研究所公共政策研究分野・特任研究員)
タイトル: ゲノム情報の研究利用およびデータ共有に対する国内の一般市民における認識と態度の量的調査結果

要旨:

医学研究や臨床試験で得られたデータを共有する動きが拡大しておりゲノムデータもその例外ではない。その際、患者や社会の利益を担保し、また理解を得ることが、倫理的・社会的な課題として指摘されている。本研究は、日本の一般市民におけるゲノムデータの研究利用やその共有に対する希望と懸念を明らかにし、ゲノム研究及び医療を進める上で必要な対応を検討することを目的とした。

【方法】
2017年2月、居住地域・性・年代を調整した20-69歳の男女44,360名にインターネットを介した無記名自記式調査を実施した。なお先行調査を踏まえ、質問票では「ゲノム」ではなく「遺伝情報」を用いた。

【結果】
10,881名から回答を得た(有効回答率25%、男女比1:1)。回答者の59%が遺伝情報を用いた医学研究を「知っている」または「聞いたことがある」と回答したのに対し、研究で得られた遺伝情報の共有は66%が「全く知らなかった」とした。自身の遺伝情報を研究に「提供したくない」者は18%で残りの約8割は「医学の研究」等、何らかの研究には提供してよいと回答した。後者のうち研究に提供した遺伝情報を他と「共有すべきでない」と回答したのは10%で、90%は共有も認めうるとしたが、初めに提供した研究者の判断で共有してよいと回答した者は13%にとどまり、共有する範囲の選定に自らの関与を希望する者が57%、独立した第三者の審査を求める者が20%に上った。共有範囲として大学等の研究機関に比べて民間企業への共有を認める回答者が少なかったが(17%)、研究機関と民間企業の共同研究の場合には許容度が上がった(52%)。また国内の機関のみ共有を認める者(41%)が国外まで認める者(30%)より多かった。

【結論】
ゲノムデータの研究利用及び共有は一定程度受け容れられているが、共有する機関や場所に対する考えは多様であった。共有範囲やその決定プロセスについてさらに市民・患者の具体的な意見を得る必要がある。

発表者2: 吉田幸恵(東京大学医科学研究所公共政策研究分野・特任研究員)
タイトル: 現状報告及び語り論文第2弾に関して

要旨:

「臨床試験・治験の語り」プロジェクトにおいて出会ったひとりの女性に関する論文の執筆を準備している段階である。
調査協力者の中で、特に「臨床試験に参加した(しようとした)線維筋痛症患者」が「痛み」と向き合う姿に着目し、一名の語りに焦点を当てて考察したい。本報告では、方法論や検討しているインタビューの内容の一部をご紹介する。

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講演会「考えてみよう、人の生殖細胞・受精卵へのゲノム編集の倫理」のお知らせ(11/19)

2017/10/25

【本イベントは盛況のうちに終了いたしました。参加者の皆様に御礼申し上げます】


講演会「考えてみよう、人の生殖細胞・受精卵へのゲノム編集の倫理」を開催します

日時: 2017年11月19日(日) 14:00~16:00(開場 13:30)
場所: 東京大学医科学研究所 1号館講堂(東京都港区白金台4-6-1)
[医科研アクセスマップ]
[医科研キャンパスマップ]

【話題提供】
内山正登さん(東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程)
宗像恵太さん(日本科学未来館科学コミュニケーター)

【講演】
アラステア・キャンベルさん(シンガポール大学生命倫理センター名誉所長)

【司会】
武藤香織(東京大学医科学研究所教授)

【概要】
人の生殖細胞や受精卵へのゲノム編集については、2015年の中国の研究者による論文発表以来、日本を含め、どの国の声明においても、患者や市民を交えた議論の必要性が指摘されています。しかし、専門家以外がこの技術をめぐる倫理的な課題について学ぶ機会は限られています。

そこで、このテーマに初めて接する皆様に楽しんでご参加いただけるよう、日本科学未来館の科学コミュニケーターに解説してもらいながら、著名な生命倫理学者のアラステア・キャンベルさんをお招きして、患者さんや市民の方々を対象とした講演会を開催します。皆様のご参加をお待ちいたしております。

参加: 無料
通訳: 逐次通訳のご用意があります
主催: 日本生命倫理学会
共催: 東京大学医科学研究所公共政策研究分野(AMED「再生医療の実現化ハイウェイ再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究(課題D)」)
協力: 日本科学未来館

お申し込みは終了しました

【お問い合わせ】
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
E-mail:

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「生命倫理」誌に論文が掲載されました(臨床試験の語りプロジェクト・吉田)

2017/10/19

臨床試験・治験の語りプロジェクトでインタビューを担当していた吉田です。
先日お知らせした「臨床薬理」誌に続き、「生命倫理」誌に受理された論文が掲載されました。

吉田幸恵、中田はる佳、武藤香織「臨床試験に関与した、がん患者の語り——「治療」と「研究」を区別することの困難さに関する考察」『生命倫理』28(1):122-31,2017/9

引き続き、本プロジェクトからの成果をご報告できるよう、メンバー一同取り組んでいきます!

(文責:中田はる佳)

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2017年度第5回公共政策セミナー

2017/10/11

本日、2017年度、第5回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年10月11日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 洪賢秀(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: 韓国の「ホスピス・緩和医療の利用および終末期患者の延命医療の決定に関する法律」と社会的諸課題

要旨:

近年、韓国では医療機関において死亡するケースが増加している。韓国統計庁によると、1995年では自宅が66%、医療機関が22.8%、その他(道路、産業現場、施設、医療施設に到着時にすでに死亡している場合、など)11.2%となっていたが、2015年には医療機関が74.7%と大半を占めるようになり、自宅で死亡した場合は15.6%、その他は9.7%となっている。このように医療機関で最期を迎えることが増え、延命治療のあり方についての関心が高まっている。

2008年2月には、「セブランス病院事件」が生じ、尊厳ある死のあり方や延命治療のあり方について社会に大きな議論を巻き起こした。ソウルにあるセブランス病院に入院した患者(当時76歳)が、植物状態となったことで、患者の家族は患者本人の治療に対する意思を尊重するために患者が装着していた人工呼吸器を取り外すことを求めて訴訟を提起した。その結果、2009年5月21日、最高裁判所で、疾病の回復を望めない状態においての人工呼吸器による延命行為は、「自然な死」への過剰な介入であるという趣旨の判決が出され、尊厳死をめぐって大きな転換点を迎えることとなった。

このような判決は、長年韓国社会において議論されてきた「自己決定に基づく延命治療」に関する立法化に拍車をかけることになった。2015年12月に、韓国の国会・保健福祉部委員会において7件の法律案が検討され、保健福祉部委員会の代案として国会を通過した(2016.1.8)。

本報告では、2016年に制定された「ホスピス・緩和医療の利用および終末期患者の延命医療の決定に関する法律」の立法化過程や法律の内容を概観し、2017年8月施行(一部2018年2月施行予定)における社会的課題について検討を行う。

発表者2: 楠瀬まゆみ(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: マンスフィールドーPhRMAリサーチ・スカラープログラム参加報告

要旨:

報告者は、マンスフィールド-PhRMAリサーチ・スカラー・プログラムに参加する機会を得て、2017年9月10日から9月22日に米国ワシントンDC、フィラデルフィア、ボストンの政府医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等を訪問する機会を得た。同プログラムは、米国のトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品開発、レギュラトリーサイエンスの分野で、それぞれの関係者が新薬開発から製品化に到るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を広く学ぶ機会を提供することを目的としている。本セミナーでは、2週間の同プログラムへの参加報告を行う。

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ヒト臓器産生を目的としたヒト-動物キメラ作製に関する一般市民の意識調査(試行)についての論文がAsian Bioethics Reviewに掲載されました(楠瀬)

2017/09/25

Asian Bioethics Reviewに下記の論文が掲載されました。

A Preliminary Study Exploring Japanese Public Attitudes Toward the Creation and Utilization of Human-Animal Chimeras: a New Perspective on Animals Containing “Human Material” (ACHM)
Kusunose, M., Inoue, Y., Kamisato, A., Muto, K.
Asian Bioethics Review (2017)https://doi.org/10.1007/s41649-017-0020-1

慢性的に移植用ヒト臓器が不足するなか、iPS細胞等を用いた再生医療研究が進んでいます。その一つに、特定臓器を作製できないよう操作された動物胚に患者自身のiPS細胞を挿入して「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」を作製し、患者の細胞でできた拒絶反応のない移植用ヒト臓器を産生するという研究が実施されています。

我々は、2012年2月に、このような「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」の作製と利用に対する一般市民の意識に関する質的調査を試行的に実施しました。対象は、首都圏在住の一般生活者24名で、20代~30代と40代~50代の男女6名ずつ計4グループに分け、事前に作成されたインタビューガイドに沿って資料を提示しながら、1グループ約2時間のフォーカス・グループ・インタビューを実施しました。インタビュー内容は逐語化され、データを発言毎にカテゴリー化し、分析しました。

その結果、20代男性のグループを除いたその他のグループでは、医学的発展の重要性は認めつつも、たとえ自分や自分の子どもが移植が必要となったとしても「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」の作製と利用に反対する態度が認められました。これらの人々は従来の「ヒトの要素を持つ動物」という視点ではなく、「私の要素を持つ動物」や「私の子どもの要素を持つ動物」という視点でヒト-動物キメラを捉え、単なる実験動物ではなく、自分や自分の子どもの細胞をもった特別な存在として位置づけていました。このような視点は先行研究では述べられていなかった視点です。

本稿の最後では、今回のフォーカス・グループ・インタビューで得られた結果や新たな視点を元に、今後一般市民の理解を得ながらヒト臓器産生を目的としたヒトー動物キメラ作製研究を実施するために必要な事項について述べられています。

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出生コホート研究の参加者調査の結果がHealth Expectations誌に掲載されました(李)

2017/09/22

D2の李怡然です。

Health Expectations誌に、下記の論文が掲載されました。

Izen Ri, Eiko Suda, Zentaro Yamagata, Hiroshi Nitta, and Kaori Muto. “Telling” and assent: Parents' attitudes towards children's participation in a birth cohort study. Health Expectations. 2017. DOI:10.1111/hex.12630

現在、世界各国で疫学の観察研究の一種である、出生コホート研究が実施されています。日本でも全国10万人の子どもを胎児期から13年にわたって追跡する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」という大規模なプロジェクトが2011年から始まっています。
親が代諾して子どもが参加する、出生コホート研究を実施する上での課題として、研究者が成長後に子ども本人から「インフォームド・アセント(informed assent)」(=賛意)を得ること、そして「ディセント(dissent)」(=拒否)の意向を尊重することが重要だと、近年国際的に指摘されています。

ただし、インフォームド・アセントを得る以前に、研究参加に代諾した親から、子どもに研究参加について伝えるプロセス(“telling”「告知」)については、これまで着目されてきませんでした。そこで、「お母さんやお父さんは、いつ・誰と・どのようにお子さんにお話をするのだろうか?」という疑問から出発して、私たちはエコチル調査に子どもを参加させている、母親と父親に対面でのサーベイ調査およびインタビュー調査を実施しました。

結果として、子どもにとっての多様なベネフィットを見出し、研究参加を続けることを直接的・間接的に促す“directive telling”(「指示的告知」)をしたいと考える親が多くいることが分かりました。

もし仮に「指示的」な告知がなされやすいとすると、親が子どもに伝えるのをサポートするとともに、親自身も重要なポイントを確認できる素材を提供することが必要だと示唆されます。また、子どもの拒否の意向も含めて、意見を発信する機会を保障することも、研究者の責務と考えられます。もちろん、実際に親子の間でどんな会話がなされ、お子さんが成長過程の中で、どのような認識をもって育っていくのかは、これからフォローする中で明らかになることです。

最後になりますが、本研究に多くのご協力を賜りました、調査協力者の皆様と、エコチル調査、「エコチルやまなし」(甲信ユニットセンター)の皆様に深く御礼申し上げます。

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「臨床薬理」誌に論文が掲載されました(臨床試験の語りプロジェクト・中田)

2017/09/19

臨床試験・治験の語りプロジェクトでインタビューを担当していた中田です。

先日、本ブログでお知らせした「臨床薬理」誌に受理された論文が掲載されました。

「患者の経験からみる臨床試験への参加判断とインフォームドコンセントの意義」臨床薬理. 48(2)31-39, 2017.
DOI:http://doi.org/10.3999/jscpt.48.31

本プロジェクトの大きな目標は2つでした。

  1. 臨床試験・治験に関わった方々の経験談を広く共有するために、データベースをつくる。
  2. 本プロジェクトで集めたインタビューを分析して得られた知見を発信し、今後の臨床試験実施体制の向上につなげる。

多くの患者さん、関係者の皆様のご協力により、1.のデータベースは2016年11月に完成・公開されました。
現在、インタビューにご協力いただいた多くの患者さんのお話を分析し、2.の成果を積み重ねているところです。
引き続き、本プロジェクトからの成果をご報告できるよう、メンバー一同取り組んでいきます!

(文責:中田はる佳)

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2017年度第4回公共政策セミナー

2017/09/06

本日、2017年度、第4回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年9月6日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 永井亜貴子(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: 遺伝子検査に利用に対する態度およびゲノムリテラシーに関連する因子の検討

要旨:

近年のゲノム解析技術の進歩により、個人のゲノム情報をもとに、疾患の診断、治療、予防を行うゲノム医療は、今後、さらに市民に身近なものとなると考えられます。2016年10月にゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースがとりまとめた「ゲノム医療等の実現・発展のための具体的方策について(意見とりまとめ)」では、ゲノム情報の取扱いに係る実態把握や、国民がゲノム情報の提供に対し懸念する事項等の調査等を踏まえて、ゲノム医療等の推進のために必要な社会環境の整備に係る取組を進める必要があるとされました。また、社会環境の整備にあたっては、国民のゲノムリテラシーの醸成が重要であり、国民のゲノムに関する知識の現状も踏まえた具体的な取組が必要であるとされました。こうした背景の下、昨年度、厚労特研武藤班では、市民を対象として遺伝情報の取り扱いや遺伝学的特徴に基づく差別等に関するインターネット調査を実施しました。本報告では、特に、遺伝子検査を始めとする遺伝情報の利用に関する態度やゲノムリテラシーに関連する因子について解析した結果について紹介します。

発表者2: 井上悠輔(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 准教授)
タイトル: 研究倫理に関する日本の歴史事案の検討

要旨:

科研費の活動の一環として一昨年から検討している、医学研究の歴史事案の検討に関する進捗を報告する。医学研究の倫理をめぐる議論は、過去の様々な不祥事に関する問題意識とそれへの対応の中で磨かれ、発展してきた。しかし、日本では、このテーマを検討する際に、反省し学ぶべき事案の多くを海外のものに頼ってきた(ニュルンベルク裁判、タスキギー事件など)。問題意識が先行する他国の過去の出来事を検討する段階にも一定の意義があったが、こうした「素材」の輸入・依存の段階を終え、研究環境や制度背景の面で多くの連続性をもつ、日本の過去の事例を改めて見つめ直し、これに学ぶ段階に進むべきだろう。日本でもこれまで実に多くの問題事案が生じてきたのであり、こうした過去の事案に関する知識を共有することは、それ自体の学問的な意義に加え、今後の教育や制度のあり方を検討するうえでも重要と考える。15の問題事例を選定したうえで、これらをどうまとめ、活用するか。現在の検討の状況を紹介する。

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【院生室より】前期納会を開催しました。

2017/07/10

皆さま、お変わりありませんか?

M1の菅原風我です。七月になり夏の暑さも本格的になりました。くれぐれも熱中症などにはご用心ください。

武藤研では、前期の納会を七月五日に開催しました。今回の会食は、昨年度ご卒業なさった佐藤桃子さんと昨年度まで研究員としてご在籍していた中田はる佳さんをお迎えしました。お二人とも新しい環境でご活躍なさっているようです。お忙しいなかお越しいただきありがとうございました。

また、飯田さんと私は、同日に初めてのセミナー発表を行ないました。私は、卒業論文の要旨と今後の研究計画について発表を行ない、多くのご質問やご指摘を頂きました。しかし、研究計画がまだ具体化されていないこともあり、満足のいく受け答えができませんでした。そのため、次回の発表がある三月には今回の修正すべき点を踏まえ、ご質問とご指摘に対してしっかりと受け答えをさせて頂きます!

(M1菅原風我)

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2017年度第3回公共政策セミナー

2017/07/05

本日、2017年度、第2回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年7月5日(水)13時00分~15時30分

発表者1: 飯田寛(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 修士課程1年)
タイトル: 自己紹介及び現在考えている研究計画について

要旨:

自分の経歴における主な業務内容と現在の研究関心である生命保険と遺伝学的検査について報告を行う。

発表者2: 菅原風我(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 修士課程1年)
タイトル: 生物医療における患者と意思決定

要旨:

今回の報告では、冒頭で卒業論文の内容についてご紹介し、修士課程の研究構想についてご報告致します。近年、検査技術の発展により、罹病リスクが事前にわかるようになりました。報告者の問題関心は、そのような予測的な検査の受検後に罹病リスクのある方々に対して十分にケアがなされているのか、罹病リスクのある方々を取り巻く医療やケアはどうあるべきかという二点にあります。修士課程の研究構想では、特に後者の問題意識から「共有意思決定」について注目し、それがどのように研究と関わって来るのかということも併せてご報告致します。

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2017年度第2回公共政策セミナー

2017/06/21

本日、2017年度、第2回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年6月21日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 船橋亜希子(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 医療過誤と刑事過失

要旨:

「医療の萎縮」を招いたとされる福島県立大野病院事件を契機として、医療過誤事案に対する刑事責任追及のあり方が問題視されてきました。この問題の解決のために、医療現場への刑事介入の制限や、医療事故調査制度に一縷の望みを託すような論考に触れる機会も増えています。しかし、報告者は刑事過失論の精緻化こそが必要であると考えて研究を続けてきました。今回の報告では、刑法の基本的な原理等もご紹介しながら、現在までに行ってきた研究の一部をご紹介させていただきます。

発表者2: 内山正登(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程2年)
タイトル: ヒト受精胚へのゲノム編集に関する意識調査

要旨:

ゲノム編集は簡便性や応用性から、生命科学研究や医療において多くの可能性が考えられている技術である。その一方で、2015年に中国のチームがヒト受精胚に対するゲノム編集を行った研究を発表して以降、ヒト受精胚に対するゲノム編集の是非に関する議論が活発になった。特にこの技術が様々な分野への影響が考えられることから、専門家だけでなく、一般市民も巻き込んだ幅広い議論の必要性が指摘されている。そこで、一般市民がこの技術の利用についてどのように考えているかを明らかにするため、2017年2月~3月に一般市民44,360人と患者6,522人を対象とした意識調査を実施した。今回の意識調査では、ゲノム編集に関する認知度や技術の理解度、ヒト受精胚への技術の許容性、リスク評価について調査した。現在、今回の調査結果をもとに論文を作成しており、調査の結果とともに論文の内容について発表する。

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厚生労働科学特別研究「社会における個人遺伝情報利用の実態とゲノムリテラシーに関する調査研究」班の活動終了!(武藤)

2017/06/16

昨年度、厚生労働科学特別研究「社会における個人遺伝情報利用の実態とゲノムリテラシーに関する調査研究」を預かりました。非常に短い期間でしたが、活動が終了し、本日、厚生労働省内で記者会見を行いました。

厚生労働省が設置した「ゲノム医療実用化推進タスクフォース」による「ゲノム医療等の実現・発展のための具体的方策について(意見とりまとめ)」では、研究・医療等におけるゲノム情報の取扱いに係る国民の懸念や現状等の把握、またその社会実装における課題の整理等は十分なされていないことから、「実態等の把握を行った上で、法的措置も含めゲノム情報の取扱いに係る制度を整備する必要性について検討する必要がある」と指摘されています。

そこで本研究では、研究・医療等におけるゲノム情報の取扱いに係る国民の懸念とともに、雇用分野における遺伝情報の取り扱いの実態を産業医への調査から把握するとともに、その結果を踏まえて、国民のゲノムリテラシーを醸成するための啓発資料を制作することを目的として、(1)遺伝的特徴に基づく差別的取扱いをめぐる概念整理に関する研究、(2)米国とカナダにおける遺伝情報に基づく差別をめぐる法的規制の動向に関する研究、(3)遺伝情報の利用や差別的取扱いへの一般市民の意識に関する研究、(4)遺伝的特徴に基づく差別的取扱いに関する患者・障害者のヒアリング調査、(5)国民のゲノムリテラシーを醸成するための啓発資料制作を行いました。

記者会見の説明資料は、こちらをご覧下さい。

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6月3日(土)オープンラボ、6月4日(日)教室説明会・活動報告会のご案内【随時更新】

2017/05/30

平成30年度(2018)年度に大学院入学を希望され、当研究室での研究を検討されている方は、下記の機会がございます。ぜひお越しください。

公共政策研究分野 オープンラボ

日時: 2017年6月3日(土)13時~17時
場所: 公共政策研究分野セミナー室(白金台キャンパス ヒトゲノム解析センター3階)
対象者: 大学院に進学し、当研究室にて研究することを検討されている方
内容: 研究室メンバ―が、研究室案内と進学相談に応じます。

※個別面談が可能です。ご来場を希望される方は、事前申込をお願いします。
【6/3オープンラボ申込み】のタイトルで「 」まで、①名前②所属③電話番号④希望時間をお送りください。

公共政策研究分野 教室説明会・活動報告会

日時: 2017年6月4日(日)11~14時(報告会は13時まで予定)
場所: 公共政策研究分野セミナー室(白金台キャンパス ヒトゲノム解析センター3階)
内容: 11~13時は当研究室所属の研究員と大学院生、修了生が日頃の活動や研究内容を紹介します。13時以降は個別相談を予定しています。

プログラム(予定)

  1. 開会あいさつ
  2. 研究室紹介
  3. 研究室の活動紹介
    1)内山正登「ヒト受精卵へのゲノム編集の利用をめぐって(仮)」
     (大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 後期博士課程)
    2)李 怡然「これまでの研究と今後の課題~遺伝性疾患の親から子への告知について(仮)」
     (大学院学際情報学府 学際情報学専攻 文化・人間情報学コース 博士後期課程)
    3)藤澤空見子「大学院生活から就職活動まで(仮)」
     (大学院学際情報学府 学際情報学専攻 文化・人間情報学コース 修士課程修了)
  4. 質疑応答

※ご来場を希望される方は、事前申込をお願いします。
【6/4報告会申込み】のタイトルで「 」まで、①名前②所属③電話番号をお送りください。

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第2回「研究倫理を語る会」講演内容の動画公開

2017/05/23

2017年2月11日に開催しました「第2回研究倫理を語る会」の一部講演内容が、ICR 臨床研究入門で公開されましたのでお知らせいたします。

ご覧いただくにはユーザー登録が必要です。
資料もダウンロードできますので、ご活用いただけましたら幸いです。

◆「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」・・・3月8日公開
講師:厚生労働省 矢野好輝氏
(緊急セミナー「研究倫理指針の改正について」と同様の内容を他会場で収録したもの)
https://www.icrweb.jp/course/view.php?id=303

◆特別講演1:「医学研究と個人情報保護のあり方」・・・3月8日公開
講師:東京大学 米村滋人先生
https://www.icrweb.jp/course/view.php?id=302

◆特別講演2:「研究不正、企業不正の背景を考える」・・・5月23日公開
講師:日本学術振興会 黒木登志夫先生
https://www.icrweb.jp/course/view.php?id=307

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2017年度第1回公共政策セミナー

2017/05/10

本日、2017年度、第1回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年5月10日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 小林智穂子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士課程)
タイトル: シニアの社会参加阻害要因の把握と促進のための実践研究

要旨:

平成29年度笹川科学研究助成(実践研究部門)として実施予定の研究について計画(案)を報告します。目的と内容は、次の通りです。
団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、国民の3人に1人が65歳以上となる2025年(いわゆる、2025年問題)に向けて、様々な高齢社会対策が講じられている。なかでも、退職後のシニアの社会参加活動は、本人の介護予防や、福祉の支え手の充足両方をもたらすものとして注目されている。しかし、特に都心部において現役時代を企業勤務で過ごした人々にとって、退職後地域社会と適応し、役割を見つけて「参加」に至るのは円滑ではないようである。そこで、シニアが社会参加活動を始める際の障壁を特定し、克服しうる準備とは何かを明らかにしたい。本研究では、阻害要因の把握を目的としたヒアリングと、ヒアリング結果を活用した、シニアの社会参加促進を目的とした実践としてのワークショップを行う予定である。

発表者2: 李 怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士課程)
タイトル: 遺伝性疾患のリスクの告知をめぐる現状と課題に関する考察

要旨:

晩発性の遺伝性疾患の発病リスクを子に告知することは、本人が人生の様々な選択をする上で、重要とされている。しかし、遺伝性疾患の患者や家族は、病気に対するスティグマや保険・雇用・婚姻等における差別への恐れなどから、子への告知には困難を伴うとされてきた。近年、ゲノム医療の急速な進展により、これまで難治性とされてきた疾患の治療や研究参加の選択肢が広がり、告知の早期化が促される状況にある。加えて、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー等の専門家の養成、少子化に伴う家族形態の変容、若年世代がアクセス可能な情報環境の充実といった、当事者をとりまく関係性の変化が著しい時代を迎えつつある。本研究は、こうした医学研究の環境や社会の変化を踏まえて、親にとっての発病リスクの告知の意図や経験、子にとっての受け止め方を問うことで、遺伝性疾患当事者のリスクの告知の現代的な様相と課題を明らかにすることを目的とする。
今回のセミナーでは、博士論文の研究計画構想について、背景の整理とインタビュー調査の計画を中心に報告する。

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【院生室より】東京大学生命科学シンポジウムで発表を行いました

2017/04/30

こんにちは、D2の内山正登です。

4月15日(土)に第17回東京大学生命科学シンポジウムで発表をしてきました。このイベントは2003年から毎年開催されている、学内の多くの研究科・研究所が一同に集まり生命科学に関する研究動向を紹介する一般公開のシンポジウムです。今回は本郷キャンパスの安田講堂での開催となりました。

今回、ヒト受精胚へのゲノム編集に関する一般市民と患者を対象とした意識調査の結果について、ポスター発表を行いました。マウス受精胚を対象に実験をしている学生の方や、これからゲノム編集をやろうとしている研究者の方々など様々な立場の方に興味を持っていただき、ポスター発表に足を止めていただきました。自分にとっても、このテーマでの発表は初めてだったので、多くの方々とディスカッションできたことは非常に良い経験となりました。

また、理系出身の自分にとっては久しぶりに分子生物学的な手法を用いた様々な最先端の研究に触れることができ、刺激を受けることができました。

参加自由なので、ぜひ生命科学研究に興味がある方は、来年足を運んでみてください。武藤研からの発表も見られるはず!!

(D2・内山正登)

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【院生室より】2017年度オリエンテーション

2017/04/07

みなさん、こんにちは。
桜が満開となりすっかり春らしい陽気ですね。D2になりました、李怡然です。

昨日、公共政策研究分野のオリエンテーションが行われました。

今年度は新入生として、大学院学際情報学府の文化・人間情報学コースにM1飯田さん、菅原さんがご入学されました。
また、特任研究員として船橋さん、学術支援専門職員として2名の方が着任されました。

前半では「教室説明編」として、武藤先生による研究室の設立経緯やこれまでの歩みのお話からはじまり(4月1日でついに10周年を迎えました!)、ゼミなどのイベント、プロジェクトとメンバーの紹介、教室のルールや大学院生活について、各担当者からの説明がありました。

また、後半の「自己紹介編」では、メンバー1人1人が順番にスライドでプロフィールを紹介しました。
毎年恒例で何か一つお題を出されるのですが、今年のテーマは「思い出の中で今でも輝いている曲」「今、心に響く曲」です!
今回は、お題の曲を流してもいい(!)ということで、懐かしい名曲やら、今流行りのドラマの主題歌やら、めいめいが曲にまつわる思い出を語りながら、しんみりと...もしくはノリノリで音楽を聞く、という斬新な自己紹介タイムとなりました。

オリエンテーション後は、これまた恒例の近隣のお店での新歓ランチです。美味しいごはんを食べつつ、自己紹介のつづきとして、趣味や出身地の話題などでさらに盛り上がり、すっかり打ち解けた雰囲気で話に花を咲かせていました。

神里先生が立ち上げられた"姉妹教室"の「生命倫理研究分野(研究倫理支援室)」と合わせて、総勢22名での新年度の始動です。
10年目を迎えた武藤研をこれからも暖かく見守っていただけると幸いです。
今後も、ブログでの情報発信をどうぞお楽しみに!

(D2・李怡然)

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【院生室より】送別会が開かれました

2017/03/30

こんにちは、D1の李怡然です。

あっという間に、年度末を迎えました。

先日、武藤研の送別会が開かれ、卒業されたOB・OGの方も加わり19名が参加しました。
今年度は、修士課程を修了される藤澤さん、佐藤さん、公共政策を離れられる石川さん、中田さんを送り出しました。

途中、サプライズでの記念品のプレゼントや、工夫をこらした演出に、笑いあり涙ありで大変盛り上がりました。
4名のメッセージを聞いていると、これまで一緒に過ごしてきた思い出がよみがえり、言葉が深く胸に沁みました。
どの方も公共政策にとってかけがえのない存在で、名残惜しい気持ちで一杯ですが、それぞれの道を歩んでいってほしいなあと願っています。

私も、気がつけば送り出す側となって3年目…!
4月には、また新たなスタッフの方も加わり、新入生の方々をお迎えすることになります。

フレッシュなメンバーで、気持ちを新たにスタートを切ることを、今から楽しみにしています。

来年度も、武藤研をどうぞよろしくお願いいたします!

(D1・李怡然)

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「臨床薬理」誌に論文が受理されました(臨床試験の語りプロジェクト・中田)

2017/03/13

特任研究員の中田です。

「臨床試験・治験の語り」データベース構築プロジェクトでは、昨年11月16日に「臨床試験・治験の語り」データベースを公開しました。これで本プロジェクトチームの大きな目標の一つを達成したところです。

私たちの目標のもう一つは、本プロジェクトで集めたインタビューを分析して得られた知見を発信し、今後の臨床試験実施体制の向上につなげることです。その一歩として、本プロジェクトに関連する論文が「臨床薬理」誌に受理されました。3月中に掲載される見込みです(※)。

本論文では、臨床試験に関わった経験がある患者41名(当時)のインタビュー調査と約12,000名の患者を対象とした意識調査から得られたデータを組み合わせて分析し、患者にとってのインフォームドコンセント(IC)の意義を考察しました。臨床試験のICは、被験候補者である患者が、その臨床試験に関する情報を得て、自律的な参加判断をするためのものとして行われています。しかし、私たちの分析から、患者はICの前に既に「インフォーマルな参加判断」をしており、ICの場ではそれを確定させるための情報収集を行っていたことが示されました。このような参加判断は患者の自由であり否定されるべきものではないのですが、医療従事者も患者も、ICを経てフォーマルな参加判断の場があることを改めて認識する必要があると結論付けました。

引き続き、本プロジェクト関連の論文を各メンバーが執筆中です。ぜひご期待ください!


※論文書誌情報

中田はる佳、吉田幸恵、有田悦子、武藤香織.「患者の経験からみる臨床試験への参加判断とインフォームドコンセントの意義」臨床薬理(掲載予定).

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