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東京大学医科学研究所公共政策研究分野

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第2回 ジャーナルクラブ記録

2011/10/07

第2回(2011年10月7日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
「薬剤経済学」の課題(上)
コーディネーター:中村洋 講師:福田敬 池田俊也
『社会保険旬報』No.2473、2011.10.1 pp12-18

井上:
Biobanking and deceased persons
Anne Marie Tassé. Hum Genet. 2011 Sep;130(3):415-23.

神里:
Biomedical Scientists' Perceptions of Ethical and Social Implications: Is There a Role for Research Ethics Consultation?
Jennifer B. McCormick, Angie M. Boyce, Mildred K. Cho. Soc Sci Med. 2008 Jun;66(12):2520-31.

洪:
パブリック・バイオバンクに関する市民の認識特性の研究
ジョ・ソンキョム、ジョ・ウンヒ、パク・ソンチョル
『生命倫理』(韓国生命倫理学会誌)第11巻 第1号、2010年6月、pp1-14

張:
バイオバンクに関する意識調査~Taiwan Genomic Surveyの事例
中央研究所 人文社会科学研究センター

荒内:
Personal genome sequencing: current approaches and challenges
Michael Snyder, Jiang Du and Mark Gerstein. Genes & Dev. 2010. 24: 423-431

 

 

 ~ジャーナル・クラブがスタート!~(院生室より)

2011/09/16

修士一年の佐藤未来子です。

今日は、記念すべき当研究室の「ジャーナル・クラブ」第1回目が開催されました。これまでも、研究倫理研究会や公共政策セミナーは月1回のペースで、院生読書セミナーは週1回のペースで行われていましたが、9月からは月2回のペースで「ジャーナル・クラブ」が始まることになりました。

発案者は当研究室の神里先生で、基本的なルールは、公共政策研究分野の参加できるメンバーが、自分の興味のある論文(英語でも日本語でも可)と内容をA4用紙1枚文でまとめたレジュメを持ち寄り、1人5分程度で紹介しあうというものです。発表の後は自由に質疑応答・ディスカッションをする時間もあります。

第1回目の本日は、武藤先生、井上先生、神里先生、洪先生、張さんが発表されました。今回私は残念ながら発表できませんでしたが、皆さんのジャーナル発表やディスカッションを聞いて勉強させて頂きました。

今後は、せっかく神里先生がセッティングして下さった良い勉強の機会なので、出来るだけ多く論文を読み、出来るだけ多く発表し(また皆さんの発表後のディスカッションにも積極的に参加し)、発表やディスカッションの腕を磨いていきたいと思います。

 

 

第1回 ジャーナルクラブ記録

2011/09/16

第1回(2011年9月16日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
Searching for a way to live to the end: decision-making process in patients considering participation in cancer phase I clinical trials. 
Kohara I, Inoue T. Oncology Nursing Forum. Volume 37, Number 2 / March 2010

井上:
Ethics: Investigators' interests: what should trial participants be told?
Romain PL. Nature Reviews Rheumatology 6, 70-71 (February 2010)

神里:
The bioethics of stem cell research and therapy
Insoo Hyun. J Clin Invest. 2010 Jan;120(1):71-5.

洪:
Ethics takes time, but not that long
Mats G Hansson, Ulrik Kihlbom, Torsten Tuvemo, Leif A Olsen and Alina Rodriguez. BMC Medical Ethics 2007, 8:6

張:
「一人っ子政策」下の農村―中国
何燕侠、譚娟『アジア遊学』No.119、2009年2月

 

 

The Hastings Center Report誌にDTC遺伝子検査に関する短報掲載(井上)

2011/09/07

 これまで遺伝子検査といえば、主に疾患の診断や何らかの疾患へのかかりやすさなどを検討するためのものであり、医師の処方のもとに医療施設で実施されるものでした。しかし近年、こうした従来の医療の枠外で、「疾患の予防や治療」を謳った遺伝子検査サービスが登場するようになりました。このように医師の処方を介さずに商業ベースで展開される遺伝子検査を「DTC(Direct To Consumer)遺伝子検査」といいます。疾患に関連する検査を医療施設外で展開しようとすることから、こうしたDTC遺伝子検査サービスはどのような基準を満たすべきか、あるいはそもそもこうした検査が許されるべきであるかどうかをめぐって、近年議論が活発になっています。
 これとは別に、最近では「医療以外の目的でのDTC遺伝子検査」についても耳目に触れる機会も多くなりました。たとえば、雑誌やホームページ、テレビ番組などで「子どもの才能や適性を判定できる」ことを謳った遺伝子検査の情報や広告をご覧になったことがある方もおられるでしょう。こうした非医療目的でのDTC遺伝子検査にはどのような特徴があり、またどのようにこうした活動を位置づけていくべきかについては、日本のみならず、国際的にも十分な検討がなされてきませんでした。
 こうした背景を受けて、今回我々は、非医療目的でのDTC遺伝子検査について、特にこれらが子どもの将来性に関する目的で提供されることが多いことを踏まえて、検討すべき主たる3つの観点を提案しました。すなわち「教育や適性の検討への遺伝的形質の利用を助長する活動をどう考えるべきか」「”子どもの最善の利益”にもとづく親の判断と遺伝的形質との関係」「検証されない科学的知見が市販化に利用されること」です。
 もとより、こうした身体能力や知能に関する遺伝子研究の知見にはまだまだ限界があり、これらの遺伝子検査の妥当性や精度はまだ「検査」といえる段階にないものがほとんどです。しかし、こうした身体能力や知能と遺伝的形質との関連を探る研究活動は広く展開されており、一定の知見を蓄積しつつあることも事実です。そして何よりも、精度や妥当性に関する問題とは別に、この種の解析の本質として、上記のような複合する検討課題があると我々は考えています。
 こうしたサービスの展開に対して新たなルールが必要でしょうか。この問いには賛否両論あることが予想されますが、専門家のフォローアップや監督を経ない形での遺伝子検査ビジネスの展開が許されるべきかどうかや、「社会の懸念がある」ことをもってこの種のビジネスの規制が正当化されうるかどうかについて、上記のような論点を踏まえて検討すべき余地があるでしょう。またこのテーマは、規制対応のあり方をめぐる問題意識の次元を越え、科学活動と社会、市民の生活との関係性の中での、「遺伝子」「遺伝学研究」に関する心象や意識の形成の解明にも発展しうるテーマであるとも考えられます。今回の報告を嚆矢として引き続き検討して参ります。

Inoue, Y and Muto, K.
Children and the Genetic Identification of Talent
Print:Hastings Center Report, Vol 41, No 5 (September-October 2011), in press.
Online:http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=5498

 

 

信濃毎日新聞コラム(12)被災地で科学を語り合う(武藤)

2011/09/05

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2011年9月5日掲載)
▽被災地で科学を語り合う▽武藤香織

 先日、大学院生と宮城県の南三陸町を訪れ、仮設住宅の隣でサイエンス・カフェを開いた。サイエンス・カフェとは、喫茶店のような気楽な雰囲気の中で科学を知り、語り合う場のこと。ヨーロッパを起源とする。今回は、家庭にあるものを利用して、オレンジやバナナ、人の唾液からDNAを取り出す実験をした。伝えたいのは、果物にも人間にも、生き物にはみんなDNAがあるんだよ、というシンプルなメッセージである。
 現地で被災者の生活支援にあたっている慶応大学のボランティアが、仮設住宅全戸をまわってチラシを配ってくれた。お礼を言うと、「チラシ配りをきっかけに、居住者とお話しができるので、こちらもありがたい」とのこと。ボランティアの力を借りた新たな地域づくりは、始まったばかりなのだ。
当日、「DNAってテレビで聞いたことあるよ」「ほかにやることもないから」と言いながら、高齢の男性が2人やってきた。小学校高学年の女の子は、低学年の子どもたちも連れてきてくれた。だが、リーダー格の男の子が「実験なんかやらない!」とゲームに興じ始めると、他の子どもたちもゲーム機を抱えて座り込んでしまった。ボランティアの学生が「こうなると、1時間は動かないんです」とつぶやく。でも、女の子は実験に参加してくれた。
 料理教室のような雰囲気のなか、大学院生が、果肉をすりつぶし、台所用洗剤や無水アルコール、アイスクリームの空容器などを使って実験を進める。アイスクリームの容器のなかに、DNAが白くふわふわした糸状になって現れると、じっと見つめていた参加者たちから小さな歓声が上がった。
「じゃあ、ドライマンゴーはどうかな?」「干し梅でやったら?」と提案が出る。試してみると、一番きれいにDNAが抽出できたのは干し梅だった。「それなら、ビーフジャーキーは?」「干したもののほうがきれいに取れるのは、なんでだろう?」という疑問がわいたところで時間切れとなった。
 ボランティアへのニーズは、瓦礫撤去などの肉体労働から地域での生活支援に移行している。子どもの学習支援以外に私たちに何ができるだろうかと考えあぐねる状況にもなってきたが、住民とボランティアが直接向き合って語り合うには、横に科学を置いて一緒に眺めるというのも、お互いに気楽でいいかもしれない。次は、地域のお祭りに参加して、出店の横でサイエンス・カフェをやってみたい。
(東大医科学研究所准教授)(了)

 

 

研究用卵子提供についての論文がNew Genetics and Society誌に掲載されました (洪)

2011/09/03

2006年に韓国で生じたES細胞論文捏造事件で、自発的卵子提供をしたドナーのその動機に着目し、「利他的な行為」に見え隠れする文化的諸要素や倫理的諸問題について分析しました。

Reconsidering ethical issues about “voluntary egg donors” in Hwang's case in global context

Azumi Tsuge & Hyunsoo Hong

New Genetics and Society. Volume 30, Issue 3,
2011pages 241-252
Available online: 25 Aug 2011

【Abstract】
In the scandal around Korean stem cell scientist Woo-Suk Hwang, the inappropriate collection of human eggs as research material, fabricated data on ES cells obtained through somatic cell nuclear transfer, and fraudulent fundraising were condemned as legal and ethical transgressions. Among the criticisms, the donation of eggs by many women became a big issue. Some of the women were motivated by financial compensation or in-kind support, while others decided to donate their eggs without payment, being convinced that the research would bring therapy for thus far incurable patients, a promise unfulfilled. Regardless of the multiple reports published to articulate why the Hwang scandal happened in South Korea, we realized during our ethnographical fieldwork in that country that it would be meaningful to consider the ethical issues in a global context. In this paper, we focus on the motivations of the South Korean women who donated their eggs voluntarily as research materials, and aim to understand it in a more general context. We point out that not only their love of family but also other altruistic motivations for donating eggs are affected by the attitudes revealed in their narratives. Finally, we argue that there is a serious bioethical issue when a social environment of sick or disabled people makes women decide to help these individuals by donating eggs.

 

 

~南三陸町の訪問~(院生室より)

2011/08/23

修士一年の佐藤未来子です。

8月20~21日、院生2人を含めた研究室の関係者5人で、南三陸町を訪問しました。目的は、①被災地をしっかり視てくること、②被災地で1日限りの「サイエンス・カフェ(気楽な雰囲気で科学を語り合う場)」を提供してくること、でした。

通常、被災地ボランティアと言えば1週間以上の長期滞在のものが多く、中には仕事を辞めてボランティアしている人もいると聞きます。したがってお話を頂いた直後は、正直、被災地をただ「視」に行くことも、1日限りのイベントの提供も、その意義を自分なりに見出すことは大変難しいことでした。「やるならば長期間、学習支援ボランティアのようにやるべきではないか」という気持ちが最後まで強かったのですが、当日は「1日限り」の意義を少しでも見出して帰ってこよう、と気持ちを切り替えて被災地に入りました。

サイエンス・カフェでは、家庭にあるもの(洗剤、塩、エタノールなど)を使って果物等からDNAを抽出する実験を行いました。被災地の方2人・現地の学生ボランティアさん数人が参加して下さり、実験も楽しく、とても良い雰囲気で終わりました。確かに実施して良かったな、という気持ちはありましたが、やはり最初の気持ちが変わるほどではありませんでした。

2日後の本日、研究室のメンバーで「振り返りの会」を実施しました。この会では、まず私たちがイベントを実施させてもらう許可を頂くまでの経緯や、その地域のライフラインの復旧状況などが武藤先生によって報告され、その後、訪問したメンバーによる現地での実施報告や感想が報告されました。

訪問したメンバーの感想を聞き、皆もやはり自分と同じような気持ちを抱えて被災地入りしていたことを知りました。一方その気持ちを理解しつつ、また違った視点でものを見ていた武藤先生の考えは、非常に印象に残りました。それは、「1日限りのボランティアに行く勇気も大事。現実問題、殆どの人が長期間のボランティアに行くことは難しく、諦めてしまう人が多い。 “1日限りのボランティア”を多くの人がやれるようになれば、良い循環が生まれると思う」という趣旨の意見でした。

今後、被災地支援活動が長期化した場合、おそらく1週間以上の滞在ボランティアが可能な人は限られてくると思います。そうした状況の中でもなんとかボランティア派遣を継続させていくためには、やはり理想ばかりを追い求めるのではなく、より現実的にシステム作りを考えなければならないのだということを学びました。これは、色んなことに当てはまる大事な前提だと思います。貴重なご示唆を頂いた会となりました。

 

 

聖路加看護大学との自主ゼミ(院生室より)

2011/07/29

はじめまして。修士1年の佐藤未来子です。
新しく「院生室より」をカテゴリに追加しました。
研究室でのイベント、大学院生活の様子などについて、今後気ままに発信していきたいと思います。

さっそくですが、イベントの報告をさせていただきます。
2011年7月8日(金)に、聖路加看護大学大学院で看護学を専攻されている学生さんと、「遺伝学的検査と遺伝医学研究の未来を考える」というテーマの交流会がありました。参加者は看護学の学生さん7名、公共政策の学生2名、医科研の学生1名で、先生方も合わせて12名で行われました。交流会の流れは大まかに、バイオバンク・ジャパンに関する話題提供(武藤先生)→バイオバンク・ジャパンの見学→全ゲノムシークエンスに関する話題提供(荒内さん:博士課程2年)→ディスカッション、という感じで行われました。

今回、臨床遺伝学の授業を履修されている看護学専攻の学生さんたちと公共政策の学生が交流するのは初めてのことで、たくさんの刺激をいただきました。刺激を受けた一番の理由は、看護の学生さんが、今まで自分にはなかったような「視点」を沢山持っていたからだと思います。たとえばバイオバンクを見学した後の感想を比べてみても、実験系の研究室で育った私は、「この多くのサンプルは患者さんの期待の量であり、研究者はこのサンプルを当たり前に存在するものと思って使ってはいけない」と感じたのに比べ、臨床側の視点で学んでいる看護学専攻の学生さんは、「あの(サンプルの)量の多さ、それがすべて『人間の一部』だと思うと、なにか図として違和感があり、それが衝撃的だった」と感じられたそうです。同じ場所で同じものを見ているのに、立場が違うだけで感じることもこれだけちがうのかと、非常に興味深く思いました。(※ちなみに写真は、バイオバンクの血清タンクを見学している時の皆さんの様子です。)

また、ディスカッション(議題:「あらゆる人が遺伝医療に関与する時代における看護とは」)の際にも、看護学専攻の学生さんたちから様々な視点の「遺伝子診断に対する意見」を聞かせていただきました。印象に残ったのは、既に6年間の看護師経験を持つ学生さんからいただいた、「出生前診断を受ける患者さんへの対応と、(出生前診断によって中絶されうる疾患の)患者会の対応を両立させることに、矛盾を感じる」というご意見です。このご意見によって、看護師さんにこういった葛藤があることに、はじめて気づかされました。他にも、「ヒトゲノム解析技術の99.9%の精度をより100%に近づけることは、研究者のスペシャリティ。それぞれの分野の人が自分のスペシャリティを高めつつ、定期的に皆で集まって議論を重ねることが大事だと思う」という意見もいただきました。これまで、「研究成果は一般の人にも分かりやすく説明されるべきもの」ということにとらわれ続けてきた私にとって、「スペシャリティを尊重したい」という一言はすごく意外性があり、研究者が果たすべき責務とは一体何か、改めて考えさせられてしまいました。

ディスカッションの終盤では、聖路加看護大学大学院の有森直子先生がこんなことをおっしゃいました。
「(遺伝看護の文脈では、)遺伝性疾患を抱える患者さんを『治療する』というのは、必ずしも医学的な治療だけを指すわけではない。」
この言葉も非常にインパクトのある言葉でした。大学時代、最先端の医学研究に憧れを抱き続けてきた私ですが、『治療する』とは一体どういうことなのか、もっと幅広く考えたいと感じるようになりました。

この交流会を通じて、たくさんの刺激をいただき、あらゆる分野の人々と交流を持つことの大切さをおしえてもらいました。自分以外の視点というのは、自分一人ではなかなか得られないものだと思うので、このような貴重な機会を与えてくださった武藤先生に感謝しております。また、暑い中足を運んでくださった聖路加看護大学の皆さま、ほんとうにありがとうございました。今後も是非またこのような機会を設けられるように私たちも積極的に企画提案したいと思います。

 報告は以上です!

 

 

信濃毎日新聞コラム(11)臓器売買の公的市場管理論(武藤)

2011/07/25

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2011年7月25日掲載)
▽臓器売買の公的市場管理論▽武藤香織
 日本国内での臓器売買は、死体も生体も含めて、法律で禁止されている。だが、この6月、国内では2件目となる臓器売買事件が発覚し、現在も捜査が進んでいる。生体臓器移植が認められるのは、日本移植学会の指針では親族間に限られる。1件目に続き今回も、それが偽装され、移植が実施された。だが、前回の事件と異なるのは、暴力団が臓器売買を仲介していた点である。臓器移植の仲介料が暴力団の資金源となっている現実に、移植関係者は大きな衝撃を受けている。
 アメリカやイギリスでも臓器売買は禁止されているが、「臓器売買を公的機関が管理すれば、水面下の臓器売買が減少して健全化し、移植の機会も増えるのではないか」という議論がある。日本より脳死臓器移植が活発な国々でも、臓器不足は解消されず、腎臓や肝臓では、生体臓器移植に頼らざるを得なくなってきているためだ。
 公的市場で臓器売買を管理する利点とはなんだろうか。まず、親族偽装がなくなることが予想される。臓器提供を希望する人と提供を受けることを希望する人を公的機関が仲介するためだ。親族への無償提供圧力も減るかもしれない。
 また、悪徳ブローカー排除の可能性が高まることも利点だ。公的機関が仲介に乗り出すことで手続きが透明化され、暴力団が関与する余地がなくなることが期待される。
 水面下で行われる臓器売買では、医学的な管理が不十分な状態で臓器が摘出、移植される例も多い。公的機関の関与によって、それが改善する可能性もある。タブレットPC欲しさに中国の高校生が腎臓を売ったという報道があったが、公的市場であれば、売る立場の人を年齢や健康状態によって制限できるかもしれない。
 こうやって利点だけをみると、公的市場管理論は、何か理想的な解決法のようにも思える。しかし、実際に公的市場で臓器売買を管理している国はない。公的市場管理論を受け入れるには、「臓器を売る権利」を社会が容認する決断が必要であり、未だそこに踏み切った国はないことを意味する。
 果たして我々は、経済的弱者が臓器を売って生き延びることを、「生存権」として認められるだろうか。日本では、公的市場管理論が広く検討されたことはない。難しい問題だが、議論する必要はある。まずは考え始めてみよう。(東大医科学研究所准教授)(了)

 

 

月刊『自治研』(7月号)ALS特集の巻頭論文を書きました(武藤)

2011/07/14

自治労の機関誌『自治研』(2011年7月号)は、「難病を生きる―ALSとともに」という特集号です。巻頭論文として、「難病をもつ地域住民への支援~市町村の役割再考」を執筆しました。
難病対策において役割が見えにくい基礎自治体への応援メッセージです。他の特集も読みごたえがありますので、どうぞご覧ください。

 

 

「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」改正の有識者ヒアリング

2011/06/15

文部科学省・経済産業省・厚生労働省の合同指針である「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の改正作業における有識者ヒアリングとして、当教室の武藤香織准教授、井上悠輔助教が報告をしました(「海外のヒトゲノム・遺伝子解析研究に関するルール」)。

発表時に利用した資料等は下記サイトから見ることができます。

資料・議事録へのリンク
・文部科学省科学技術・学術審議会生命倫理安全部会ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会(第3回)
http://www.lifescience.mext.go.jp/2011/06/32367.html
・厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会ヒトゲノム・ 遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会(第3回)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001gj3w.html
・経済産業省産業構造審議会化学・バイオ部会 個人遺伝情報保護小委員会(第14回)

 

 

信濃毎日新聞コラム(10)放射線の影響 科学者の責務(武藤)

2011/06/06

◎サイエンスの小径(6月6日掲載)
▽放射線の影響 科学者の責務▽武藤香織

 福島県飯舘村は、「日本で最も美しい村」連合に加盟する、景観の美しい内陸の村だ。内陸ゆえに、今回の震災で津波の影響は全く受けていない。だが、福島第1原発の事故で飛散した放射性物質による線量が高いとして、計画的避難地域に指定された。村では、6月上旬までに全村民の避難を完了させるという。
 飯舘村の汚染を裏付けるのは、5月6日に発表された、福島第1原発から80キロ圏内の地表の汚染地図だ。このデータは、4月に文部科学省が米国エネルギー省と協力して航空機で観測したもので、地表1~2キロ四方ごとに放射性物質の蓄積量を測定している。この地図からは、風向きや地形によって、同じ市町村のなかでも、集落や地区によって、放射性物質の飛散状況が全く異なる結果になったことがうかがえる。
 多くの住民が引っ越しを始める間際の週末、飯舘村での住民健診に参加した。住民からは、「屋内でゲームばかりさせていて、子どもが10キロ以上太った」「子どもを屋外で遊ばせずに過ごしていたら、口の周りに湿疹ができている」「農作業ができないストレスで酒量が増えた」などの声があがっていた。心身への影響が心配されるなか、引っ越し作業が進んでいる。
 また、飯舘村周辺で開かれた放射線の影響に関する住民説明会では、「4月に生まれた子どもを母乳で育てていいのか」「ここより放射線量の高い地域の露地野菜はなぜ出荷停止になっていないのか」など、たくさんの質問が出た。ここで暮らしていく人は、子どもの外遊び、地元でとれた野菜や井戸水の摂取など、暮らしに密着した対応について知識を得たいという強い意欲がある。
 きめ細やかな対応が求められるなか、自治体も疲弊している。原発事故当初は、自治体も混乱し、放射線量を測定すると言って入村した研究者を信頼して受け入れた。しかし、得られたデータを村には還元せず、先にマスメディアに流して風評被害の契機をつくった研究者もいたという。
 シーベルトとベクレルの換算式を教えるよりも、それぞれの暮らしにあわせた被ばく線量の理解を促進することのほうが大切だ。同じ屋内でも、コンクリートで遮蔽された建物のなかで過ごす人と、木造家屋のなかで過ごす人では、気をつけることも異なる。科学者は、放射線の影響を、人々の暮らしに密着した知識として伝える責務がある。(東大医科学研究所准教授)(了)

 

 

6月11日(土)学環・学府めぐりについて

2011/06/03

学際情報学府の兼担教員となっている関係で、「学環・学府めぐり」に参加させていただいています。
学環・学府では、とても異端かもしれない! 
でも、学府からの進学希望者の方は、よかったらお立ち寄りください。

 

 

学生及び教職員のための第2回ボランティア活動報告会(6/28)

2011/06/03

東京大学の「学生及び教職員のための第2回ボランティア活動報告会」で武藤から話題提供をさせていただくことになりました。よろしかったらお越しください!

日時:平成23年6月28日(火)
時間:17時30分から19時00分(予定)
場所:経済学部第1教室(収容人数:340名)

1.学生からの報告
1)法学部第三類(政治コース)3年生クーカーチャイさんからの報告
2)医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程2年生堀越直子さんからの報告
2.職員からの報告
1)教育学研究科・教育学部千明賢治事務長からの報告
3.教員からの報告
1)医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター武藤香織准教授からの報告
4.自由ディスカッション
5.注意事項の伝達

 

 

南三陸町支援プロジェクト@慶應義塾(6/16)

2011/06/03

慶應義塾大学では、前期の三田キャンパス「人間科学特殊 家族・医療・社会」と、後期の矢上キャンパス「生命倫理学」を受け持たせていただいています。
日吉キャンパスから南三陸町にボランティアバスを出すことになったそうです。ボランティアバスがあれば、往復の足についての心配が減り、学生さんも安心ですね。
このプロジェクトのリーダーは、経済学部教員の長沖暁子さん。彼女のお誘いで、キックオフイベントでお話をさせていただくことになりました。
ボランティアに興味のある慶應の学生さん、よろしかったら、お越しください。

6月16日(木)18時15分~ 日吉キャンパス独立館 2階 D201

 

 

6月4日(土)オープンラボについて

2011/06/01

メディカルゲノム専攻で開催するオープンラボに本研究室も参加しています。
メディカルゲノム専攻以外にも、学際情報学府を受験される方も歓迎します。
訪問可能時間は、6月4日(土)10時から16時までです。
大学院受験を検討しておられる方で、訪問を希望されている方は、できれば前もってご連絡をいただければ幸いです。

電話 03-6409-2079
pubpoli@ims.u-tokyo.ac.jp

 

 

東日本大震災 市民公開医療懇談会@医科研病院(5/25)

2011/05/19

医科研病院では、東日本大震災に対する医療者派遣を本格的に実施することになりました。
恒例となった市民公開医療懇談会では、港区医師会の高岡邦子先生から岩手県大槌町でのAMDAの活動についておうかがいします。また、我々も、医療者による支援ではない活動経験について、お話をさせていただきます。ぜひお越しください。

第10回 市民公開医療懇談会
日時: 平成23年5月25日(水)午後5:30~6:30
場所: 医科研病院棟8階トミーホール
1 東日本大震災
  「素人のよさが生きる都民ボランティア活動報告」
       公共政策研究分野     武藤 香織准教授・井上悠輔助教

2 東日本大震災
  「医療NGO-AMDAによる医療支援~刻々と変わる被災地のニーズに対応することの重要さ」
       港区医師会          高岡 邦子  先生

 

 

JHG掲載論文がA-IMBN Research webで紹介されました

2011/05/06

こちらをご覧くださいませ。A-IMBN Research website.

Watanabe, M.,Inoue, Y., Chang, C., Hong, H., Kobayashi, I., Suzuki, S. & Muto, K. For what am I participating? The need for communication after receiving consent from biobanking project participants: experience in Japan. Journal of Human Genetics advance online publication 10 March 2011 (doi: 10.1038/jhg.2011.19)

 

 

5月8日(日)オープンラボについて

2011/05/04

メディカルゲノム専攻で開催するオープンラボに本研究室も参加しています。
メディカルゲノム専攻以外にも、学際情報学府を受験される方も歓迎します。
訪問可能時間は、5月8日(日)13時から18時までです。
大学院受験を検討しておられる方で、訪問を希望されている方は、できれば前もってご連絡をいただければ幸いです。

電話 03-6409-2079
pubpoli@ims.u-tokyo.ac.jp

 

 

信濃毎日新聞コラム(9)震災後の町とカーナビ(武藤)

2011/04/18

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2011年4月18日掲載)
▽震災後の町とカーナビ▽武藤香織

 私は4月5日から1週間、東京都の災害ボランティア第一陣団長として宮城県に赴き、初めて災害ボランティア活動に参加した。数名で1チームとなって、作業道具を積んだレンタカーで被災地のボランティアセンターに向かい、さらにそこで指示を受けた現場に向かう。そして、黙々と、住宅に流れ込んだヘドロや油、流木、瓦礫を撤去し、道路から玄関や裏口までの通路を確保する作業をした。
 一見、大きな被害がないように見える地区でも、ひとつ角を曲がると、瓦礫の山だ。またひとつ角を曲がると、住居の裏側で漁船が横転している。しかし、静けさのなかで人々の暮らしは再建され始めていた。
 知らない土地を巡る我々の活動は、カーナビ(カーナビゲーションシステム)がなければ全く実現できなかった。だが、それでも困難を極めた。カーナビの指示に従ったら、壊滅状態とされる地区の道路を「推奨ルート」として案内されたことがあった。道を間違えると元のルートに戻るように案内する機能のおかげで、海水が満ちたままの道路からしばらく脱出できなかったことも。
 被害の大きな現場で言葉を失っているときでも、とても明るい女性の声で「運転、お疲れさまでした!」と声をかけてきた。「カーナビは人間じゃなくて機械なんだから」と自分に言い聞かせつつも、車内の仲間がカーナビに抱く感情は、徐々に悪化していった。
 カーナビのように、人への情報提供と機械への指令をやり取りする装置は、どんどん高度になっている。いつのまにか、機械に対して、人と同じような対応を求めるほどである。しかし、機械が与えてくれる情報をどう活用するのか、最終的に制御するのは、やはり人なのだ。
 そんなカーナビが最も威力を発揮したのは、家屋が全壊している地域に入ったときである。瓦礫や船や車の山に周囲360度を囲まれ、震災前であれば目印になったであろう建物や番地は全く手掛かりにできない状況だった。だが、カーナビに搭載されていた、震災前の地図情報のおかげで、「目的地」が的確に案内され、瓦礫の中から家主が手を振って迎えてくれた。
 このときばかりは、カーナビを抱擁したかった。そして、カーナビを通して、賑やかな鮮魚店が立ち並ぶ、震災前の街並みを想像した。被災地の一日も早い復興を願う。(了)

 

 
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