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東京大学医科学研究所公共政策研究分野

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2022年度第1回公共政策セミナー

2022/05/11

2022年度 第1回公共政策セミナー

本日第1回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時: 2022年5月11日(水)13:30~16:00

◆報告者1:原田 香菜(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
◆タイトル:英国の生殖補助医療・胚研究に関する制定法とヒト配偶子の位置づけの変遷〜Yearworth 判決を契機として
◆要旨:英国では、ヒトの配偶子および胚を用いた生殖補助医療の実施、研究におけるヒト配偶子・胚の取り扱いについて、Human Fertilisation and Embryology Act 2008 (HFEA 2008と略称) により定められる。わが国でも2020年12月、ようやく生殖補助医療特例法が制定されたが、配偶子・胚の提供等についての行為規範、そして実施情報の保存・管理・開示等に関する仕組みは未整備である。英国HFEA 2008と制度の成り立ち、およびヒト配偶子の法的性質・その保管契約について示した近時の判例をとおして、今後、わが国で生殖補助医療・ヒト胚研究について横断的かつ連続的な法規制を設けることの適否、そして規律のあり方について検討する端緒としたい。

◆報告者2:亀山 純子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
◆タイトル: 医療AIの研究開発・実践に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究
◆要旨:医療におけるAIブームの中核ともいえるディープラーニングを含むニューラルネットワークの基礎は、人工知能という言葉が生まれる以前に存在していた。1943年には、Waren S. McCullochとWalter J. Pittsによって人工ニューロンが発表されたが、この応用として注目を集め、期待されたのが医療分野であった。第3次AIブームが画像認識分野を中心に始まったことは有名であるが、超高速高精度で自律的に情報処理を可能とするAIは、医師の診断の高速化と精度向上を支援するツールとして期待されている。今後は、これまでの診断のみならず、予防や治療といった側面でのAI活用を推し進める研究開発もさらに規模を拡大していくものと思われる。一方で、AIによる解析においては、患者の個人情報の二次利用にあたって、必要な匿名加工に関して定めた「次世代医療基盤法」への適応も留意した上で慎重に進める必要がある。AI活用が、国民の理解と社会の受け入れを得られるような、より安全で有益なものとして進展されることを望む声も高まっている。今回、日本人市民を対象とした調査研究によって得られた成果を報告する。

 

 

2021年度第10回公共政策セミナー

2022/03/09

本日第10回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:3月9日13時半~16時00分頃

◆発表者1:高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)

◆タイトル:患者対象のFirst in human(FIH)試験における倫理的課題の探索ーリスクベネフィットの比較衡量に関する検討ー

◆要旨:治療法の臨床応用には、人を対象とした臨床試験が必要となる。とりわけ、前臨床試験後に安全性検証を主目的として人で初めて実施される、いわゆるFirst in human試験(FIH試験)には不確実性や未知のリスクへの懸念が考えられ、そのリスクベネフィットの衡量はより複雑性を増すと考えられる。FIH試験のリスクべネフィットへの倫理的側面に関しては、主に抗がん剤等のFIH試験を対象に議論が行われてきたが、研究参加者や研究者等さまざまな立場からの意見をもとにした検討は、十分になされているとは言えない。そこで本研究では、FIH試験の実施に関する多面的で総合的なリスクベネフィット衡量のあり方を検討し、今後のFIH試験の計画立案や倫理審査への一助とすることを目的として、iPS細胞を世界で初めて用いたFIH試験に焦点を当て、研究に関与した様々な立場の当事者にインタビュー調査を実施している。本報告では、主に対象とする臨床試験の背景を示した上で、インタビュー調査の進捗について報告する。

◆発表者2:飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)

◆タイトル:オーストラリアでの生命保険における遺伝学的検査結果の取扱い-変更の背景・経緯と自主規制の内容-

◆要旨:遺伝情報はその固有性、不変性、親族共有性、将来予見性などから特別な情報であるとする遺伝情報例外主義から諸外国では遺伝情報の取扱いを制限する動きがみられる。特に生命保険は注目された分野であり、遺伝学的検査結果をもとに危険選択をすることで、生命保険の加入できない、もしくは保険料が高くなることは差別であるとしてその使用を法律等で禁止する動きがある。一方で、生命保険会社の視点では、情報を入手できなければ、逆選択として保険数理に影響があるとの反論がある。諸外国が生命保険会社での遺伝学的検査結果の使用を禁止する中で、オーストラリアはこれまで加入者に遺伝学的検査結果の告知を義務付け入手していた。しかし、2019年に期限付きで一定の保険金額については遺伝学的検査結果を入手しないとする業界の自主規制を制定した。このオーストラリアの生命保険会社の遺伝学的検査結果の取扱いの変更の背景と経緯および英国のモラトリアムと比較した自主規制の内容について報告する。

 

 

2021年度第9回公共政策セミナー

2022/02/09

本日第9回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:2月9日13時半~16時20分頃

◆発表者1:楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)

◆タイトル:クラウド・コンピューティングを用いたゲノム研究に関する一般市民の意識調査

◆要旨:近年、オープンサイエンスの推進のため、データの収集、保存、解析、共有/公開というサイクルを円滑に回すことができるデータ・エコシステムの構築が求められている。ヒトゲノム研究においては、技術の向上によりゲノム解析に要する時間やコストが減少、そこで生み出されるデータは膨大で年々増加傾向にある。ある試算によると2025年までに1億から20億のヒトゲノムデータが解析される可能性があり、その保存のためだけで2~40エクサバイトのストレージ容量が必要と言われる。また国際共同研究においては、HDD、SSD、SSHD等の大容量記憶装置を用いて物理的にデータを移動させることには限界がある。そのため国際共同研究においてはクラウド・コンピューティング(以下、クラウド)を用いる場面が多くなっている。しかしゲノム研究におけるクラウド利用には、プライバシー保護の問題、国際間での異なるデータ保護法令への対応、データ・ガバナンスの問題が指摘され、ゲノム研究におけるクラウドの活用にあたっては研究参加者や一般市民の理解の重要性も指摘されている。他方日本においては、研究におけるクラウドの利活用について言及した規制した指針や法令は無く、またゲノム研究における研究参加者や一般市民のクラウドの理解や受容についての調査も見られない。そのため、2021年3月に一般市民を対象に医学研究におけるクラウドの利活用に関する意識調査を試行した。本発表では、その意識調査の結果について発表する。

◆発表者2:船橋 亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)

◆タイトル:ディオバン最高裁決定を読む

◆要旨:2021年6月28日に出されたディオバン最高裁決定について報告する。裁判例においては一貫して、被告人がデータを改ざんし虚偽の図表等のデータを作成していた等の事実が認められている。それにもかかわらず、製薬企業及びその社員(当時)について一貫して無罪とされたのはなぜか。本事案における刑事責任とその判断構造について検討してこれを明らかにし、刑事責任追求の意義と限界を考える。検討にあたって必要な刑法の基礎的な部分についてもご紹介しながら、刑法的観点からでは検討し尽くせないように見える本事案について話題提供をする。

 

 

2021年第8回公共政策セミナー

2022/01/12

本日第8回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:1月12日13時半~16時

◆発表者1:北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
◆タイトル:患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討
◆要旨:医薬品には副作用等のリスクがあり、製造販売後も引き続き情報収集することが、医薬品の安全かつ適正な使用のために重要である。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んでいる。
しかし、我が国ではこうした取組みが諸外国に比べて大きく後れているため、その原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるべく、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素について、文献研究及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。本報告においては、計画中の医療従事者を対象としたアンケート調査に先立ち実施した関係者2名へのヒアリング結果を提示すると共に、それを踏まえた今後の調査計画(案)を共有する。

◆発表者2:永井 亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教)
◆タイトル:がんゲノム医療の普及に向けた情報提供のあり方に関する研究
◆要旨:2019年6月にがん組織の遺伝子を一括して網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査の保険適用が開始され、がんゲノム医療の体制整備が進められている。がん遺伝子パネル検査を受けた患者の検査データは、患者の同意に基づき、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録され、C-CAT調査結果の作成に用いられるほか、大学・企業などが研究・開発目的に利用(二次利用)するために提供される。本報告では、今後、がんゲノム医療を適切に推進していくために必要となるがんゲノム医療に関する情報提供のあり方について検討するために、がん患者を対象として実施したフォーカス・グループ・インタビュー調査の結果について報告する。

 

 

2021年第7回公共政策セミナー

2021/12/08

本日第7回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:12月8日13時半~16時半

◆発表者1:佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)

◆タイトル:先住民族のゲノム研究における日本とカナダの比較

◆要旨:歴史上、マイノリティや立場の弱い人々が科学研究や医学研究の名の下に搾取された事例は枚挙にいとまがないが、世界各地に居住する先住民族の人々も、同様にICの軽視やヒト資料・データの不適切な利用といった被害を被ってきた。特にゲノム研究は、バリアントをある程度共有するマイノリティのコミュニティである先住民族にとって、バイオパイラシーや結果解釈の影響など、研究参加によって不利益を被る可能性が低くない。一方近年、ゲノム研究者側からも、世界的に見てサンプルがヨーロッパ系に偏っていることから、多様な人々の研究参加を求める声が上がっている。本発表では、このような状況を踏まえ、関連した日本における状況・取り組みと、海外、特にカナダの動きを対置し、博論研究における問題意識とアプローチの足場を固めることを目指す。

◆発表者2:武藤 香織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授)

◆タイトル:遺伝情報の取扱いと差別禁止について

◆要旨:遺伝情報に基づく差別(genetic discrimination)とは、「実際の、もしくは推測された遺伝的特徴に基づいて、個人やその血縁者に対し不利な取り扱いを行うこと」と定義される。ゲノム医療が本格化されるなかでも、議論が進まない遺伝情報に基づく差別防止について、最近の模索を共有する。

 

 

2021年第6回公共政策セミナー

2021/11/10

本日第6回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:11月10日13時半~16時

◆発表者:河合香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)

◆タイトル:遺伝性疾患における結婚出産の葛藤とは何かーハンチントン病を手がかりに

◆要旨:遺伝性疾患の患者、家族にとって、遺伝的なリスクの家族内での共有のあり方や、本人の選択として委ねられている結婚や出産については大きな悩みであった。本研究ではハンチントン病(HD)を取り上げ、常染色体優生遺伝疾患に関して診療や看護・遺伝カウンセリングなどを行った経験のある医療従事者、さらに告知や結婚・出産の悩みを抱える患者、家族に半構造化インタビューを実施。遺伝的なリスクや結婚・出産についての情報提供や助言の現状、また患者・家族が抱える葛藤を明らかにし、今後のあり方を検討する。

 

 

 

2021年第5回公共政策セミナー

2021/10/13

本日第5回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:10月13日13時半~16時

◆発表者1:李 怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 助教)
◆タイトル:認知症関連疾患の超早期予測・予防の倫理的課題を考える
◆要旨:認知症・アルツハイマー病をめぐる新たな展開として、症状があらわれる前の超早期に疾患の発症を予見し、予防的に介入することを目指す研究開発が推進されている。脳に限らず多臓器間の全身ネットワーク変容を包括的に解明し、次世代イメージング・センシング技術を利用する、AI・数理モデルを用いたシミュレーションを開発し臨床応用するなど、新規技術を複合的に活用することが計画されている。しかし、疾患の発症前予測・予防的介入は、従来の認知症対策や理念とは異なる方向性をもっており、人を対象に研究を行う上で配慮すべき事項、革新的技術を社会実装する上での諸課題も考えられる。そこで本研究では、関連する既存の文献を整理し、認知症の早期予測・予防の実現を目指す研究開発が人々や社会に与えるインパクトを考慮する上での基礎的な論点を抽出することを試みる。報告では、背景と先行研究を紹介し、この問題を考える端緒をつかみたい。

◆発表者2:井上悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授)
◆タイトル:パンデミック・ワクチンの展開を規定するもの:OECD諸国間の地域相関研究
◆要旨:日本と同様、多くの先進国では、新型コロナウイルス感染症に関する予防接種が、国の主導のもとに展開されている。一時期の極端なワクチン不足の状況からは脱しつつあるものの、その進捗には国によって大きな開きがみられる。予防接種は臓器提供などと同様、個人の意思表明に限界の多い利他活動(Pywell, 2000)であるとされる。WHOは”voluntary”な予防接種の展開を推奨しているものの、ワクチンに関する「自由意思」は、自然発生的・内発的なものというより、各国・地域が置かれた状況によって規定される面も大きいことが考えられる。国の主導のもとに展開されるパンデミック・ワクチンの場合にはその傾向がより顕著になりうる。こうした各国の進捗の相違やその背景を検討する際、地域相関研究(Ecological Study)の手法は有効であると考える。OECD38か国における進捗(2021年5月~10月)に関して、説明変数の候補となり得る項目との相関関係分析/重回帰分析を行い、安定的に関連している項目の特定を試みた。

 

 

2021年第4回公共政策セミナー

2021/09/09

本日第4回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:9月8日13時半~16時

◆発表者1:高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
◆タイトル:患者対象のFirst in human(FIH)試験における倫理的課題の探索ーリスクベネフィットの比較衡量に関する検討ー
◆要旨:あたらしい治療法の臨床応用には、人を対象とした臨床試験が必要となる。この臨床試験においては、研究対象者は研究の実施によるリスクを引き受けつつ、その研究自体は研究対象者の利益を目的としたものではないとされている。とりわけ患者を対象とした、人で最初に実施する安全性検証を主目的とした臨床試験(FIH試験)には不確実性や未知のリスクへの懸念が大きく、そのリスクベネフィットの衡量はより複雑性を増すと考えられる。しかしながらこのようなFIH試験のリスクべネフィットの検討に関して、研究に関与するさまざまな立場からの検討は、未だ十分になされてはいない。そこで本研究では、FIH試験の実施に際して、多面的で総合的なリスクベネフィット衡量の必要性を明らかにし、今後のFIH試験の計画立案や倫理審査の一助とすることを目的として、FIH試験に関与した様々な立場の当事者にインタビュー調査を行う。本報告では、主に理論調査の結果を示すとともに、インタビュー調査の進捗について報告する。

◆発表者2:木矢幸孝(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
◆タイトル:遺伝学的リスクの告知/非告知という行為の体系的な説明に向けた試論
◆要旨:遺伝性の病いをもつ人々は自己の病いの問題だけでなく、遺伝学的リスクの告知に問題を抱えうる。彼/彼女らは、子や血縁者に対して、いつ・どのように告知を行うべきかを思案し、場合によってはそれぞれの事情において告知を行わないこともある。遺伝学的リスクに関する告知研究は、主として告知を行う理由/行わない理由(非告知の理由)の分析、あるいは告知プロセス等を検討してきた。確かに告知/非告知の理由やそのプロセスの解明は重要であるが、先行研究では遺伝学的リスクの告知と非告知の理由の共通項にはあまり関心が払われていない。それにより、告知/非告知という行為を体系的に理解する手がかりを後景化させているのではないかと思われる。そこで本報告では、遺伝性の病いである球脊髄性筋萎縮症患者の語りを通して、告知/非告知、双方の理由の共通項に着目したうえで、告知/非告知という行為の体系的な説明に向けた試論の提示を試みる。

 

 

2021年第3回公共政策セミナー

2021/07/14

本日第3回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:7月14日13時半~16時

◆発表者1:楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
◆タイトル:医学研究へのヘルスケアデータの提供と利活用に関する一般市民の意識調査
◆要旨:近年パーソナルデータの利活用が活発となり、医学研究においてもビッグ・データや機械学習などを用いたデータ駆動型研究も活発に行われている。そのようななか、Personal Data や Personal Health Record を本人の判断のもとで利活用する試みが行われている。加えて、企業の中には情報銀行や、その他独自の活動を通して、データ主体に情報提供料や特典等 の対価を受領することができる情報銀行サービスの提供を予定している企業も存在する。他方、医学研究の分野においては、研究参加の利他性の重視や不当な誘因の議論から、身体的侵襲を中心に組み立てられた従来の研究倫理の枠組みでは、研究対象者との利益共有の議論はあまり進んでこなかった。 このような背景において、2021年3月に一般市民を対象にヘルスケアデータ等の医学研究への提供と利活用に関する意識調査を行った。本発表においては、意識調査の結果の一部について発表を行う。

◆発表者2:北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
◆タイトル:患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討
◆要旨:医薬品には副作用等のリスクがあり、製造販売後も引き続き情報収集することが、医薬品の安全かつ適正な使用のために重要である。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んでいる。しかし、我が国におけるこうした取組みは、諸外国に比べて大きく後れているのが現状である。そこで、我が国の現状の原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるため、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素について、文献研究及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。本報告においては、調査研究に先立ち実施した関係者2名へのヒアリング結果を提示すると共に、それを踏まえた今後の調査計画(案)を共有したい。

 

 

2021年第2回公共政策セミナー

2021/06/09

本日第2回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:6月9日13時半~16時

◆発表者1 飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
◆タイトル:労働分野でのゲノム情報の取扱いをめぐる諸課題に関する研究ー対象とするゲノム情報とは何かー
◆要旨:諸外国では、遺伝的特徴に基づく差別を防止するという観点からゲノム情報を保険や労働で利用することは、米国での遺伝情報差別禁止法(GINA)(2008)のほか、近年ではカナダでの遺伝情報差別禁止法(2017)、中国での人類遺伝資源管理条例(2019)などのように原則として禁止している国がある。一方、日本では法規制は存在しない。今後、ゲノム医療が普及することにより、遺伝学的検査の結果などのゲノム情報が労働者自身や労働者の主治医等から産業医あるいは健康保険組合に提供される機会が増加する可能性があるが、事業者と産業医、健康組合がどのような問題意識を持っているか、ゲノム情報の利用実態などは明らかでない。今回の発表では、アドバイザーより指摘のあった当研究にあたってのゲノム情報は何を対象とするのかの問いに対し、ゲノム情報例外主義とその批判の先行文献から対象とするゲノム情報を紐解いてみたい。

◆発表者2 佐藤桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)
◆タイトル:科学研究の成果発表における 「人種」という用語の使用
◆要旨: 第二次世界大戦以降、優生思想への反省から、raceという概念は科学的基盤を持つヒトの区分ではなく、文化的・社会的構築物であるという考え方が広まった。一方、疫学や遺伝学は、集団ごとの特徴に着目することによって、遺伝的要因・環境的要因と疾患の関連性を明らかにしてきた。その集団を指す際も、1950年代頃から、populationやethnicityといった用語が使用されるようになっている。しかし、日本においてはraceという用語および、ヒト集団を指すpopulationが、いずれも「人種」という用語にまとめて翻訳される事例が現在においてもしばしば見受けられる。これは新聞記事などだけでなく、大学や研究機関のプレスリリースにおいても同様である。
 本発表では、日本語の「人種」も科学的文脈では可能な限り使用せず、言い換えていくべきではないかという問題意識に基づき、国外および国内の経緯と現状に関する先行研究を紹介する。その上で、日本の遺伝関連学会における「人種」およびその代替と考えられる用語の使用についてサーベイを行う研究計画について発表を行いたい。

 

 

2021年第1回公共政策セミナー

2021/05/13

本日第1回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:5月12日13時半~16時

◆発表者1.渡部 沙織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)

◆タイトル:「希少・難治性疾患のELSIに関する質的研究」

◆要旨: 本報告では、今年度実施を予定している2つの質的調査について計画の概要を報告する。(1) 再生医療臨床研究への患者の協力における課題本研究の目的は、日本の患者支援団体が幹細胞を用いた再生医療の臨床研究に協力・参加する際に直面する課題や困難について、探索的な事例研究と質的分析を行うことである。日本では近年、iPS細胞を中心に幹細胞を用いた臨床研究・実用化研究が進められている(Tobita et al.2016; Lysaght 2017)。これらの臨床研究には主に希少疾患の患者が参加しており、希少疾患患者団体が被験者の募集や研究内容の啓発に協力するケースが増えている。本研究では、iPS細胞などの多能性幹細胞を用いた再生医療の臨床研究に協力している国内の複数の希少疾患患者団体を対象に、研究協力に際してどのような課題を認識しているのかに関して半構造化インタビューを行う。(2) 希少・難治性疾患のELSIに関する探索的研究本研究の目的は、希少・難治性疾患の患者を中心としたELSIに関して患者をとりまく多様なステークホルダーへのインタビュー調査を通じて、日本でのELSI課題や概念的探索を行うことである。国際的なRare Disease研究のコンソーシアムであるIRDiRCで組織されたワーキンググループでは、希少疾患領域のELSI課題を5つのカテゴリに分類している(Hartman et al. 2020). この分類を基にしながら、日本での具体的な課題について患者や関係者がどのような認識や概念を有しているかを探索的に検証するため、患者・家族、研究者、医療者、医薬品開発企業等、各ステークホルダーに半構造化インタビュー調査を実施する。

◆報告2. 河合 香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 修士課程)

◆タイトル:「遺伝性疾患における結婚出産に関する助言のあり方の検討」

◆要旨: 遺伝学的特徴による結婚や出産をめぐる悩みは、患者・家族にとって切実な問題であることが、当事者の声から明らかになっている。しかし、十分に横断的に議論が尽くされているとは言い難い。1980年代から1990年代にかけては、遺伝性疾患の難病患者に向けた助言が掲載される『患者と家族のためのしおり』において、結婚や出産について可否判断にまで踏み込んだ主観的な記述が見られた。2000年代以降、遺伝カウンセリングが制度化された後に、専門家から当事者に向けて提供されている公開情報としては、「難病情報センター」が存在する。この「難病情報センター」の情報提供のなかから、遺伝に関わる疾患を抽出し、結婚や出産について可否判断をしているか、どのような助言がなされているかを分析した。それにより、医療従事者が遺伝性疾患の当事者の結婚や出産について、どのような情報提供をしているのかの現状を明らかにし、そのありようを検討する。

 

 

2020年第10回公共政策セミナー

2021/03/10

本日第10回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:3月10日13時半~16時

◆発表者1.北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)

◆タイトル:患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討

◆要旨:医薬品は、品目毎に厚生労働省の承認を受けて初めて製造販売できるようになる。しかし、承認前に得られる副作用等の情報は一般的に限られることから、承認後も引き続き情報収集することが、副作用の早期発見や適正使用のために重要である。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んできている。しかし、我が国におけるこうした取組みは、諸外国に比べて大きく後れを
取っているのが現状である。そこで、我が国の現状の原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるため、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素
について、文献調査及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。本報告においては、調査研究の前段階として位置付け可能な別調査について、調査結果の取りまとめ(案)を共有したい。

◆発表者2.飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻  博士後期課程)

◆タイトル:労働分野でのゲノム情報の取扱いをめぐる諸課題に関する研究 -健康経営-

◆要旨:諸外国では、遺伝的特徴に基づく差別を防止するという観点からゲノム情報を保険や労働で利用することは、米国での遺伝情報差別禁止法(GINA)(2008)のほか、近年ではカナダでの遺伝情報差別禁止法(2017)、中国での人類遺伝資源管理条例(2019)などのように原則として禁止している国がある。一方、日本では法規制は存在しない。労働分野で事業者が扱う情報に関連する規定としては、厚生労働省が定めた「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(2015)や「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(2018)といったガイドラインが存在する。その内容は、事業者に対して、労働者の健康確保措置の実施や安全配慮義務の範囲を超えた健康情報の収集を制限し、労働者が健康情報の取扱いに同意しないことをもって不利益を与えないこととされており、特段の罰則が設けられているわけではない。また、遺伝的特徴に関する情報については、「色覚検査等の遺伝性疾患に関する情報については、職業上の特別な必要性がある場合を除き、事業者は労働者等から取得するべきではない」とのみ述べられている(高柳2014)。今後、ゲノム医療が普及することにより、遺伝学的検査の結果などのゲノム情報が労働者自身や労働者の主治医等から産業医あるいは健康保険組合に提供される機会が増加する可能性があるが、事業者と産業医、健康組合がどのような問題意識を持っているか、ゲノム情報の利用実態などは明らかでない。本報告では、労働分野での健康情報の活用事例として「健康経営」という概念を紹介する。また、米国の状況も踏まえつつ、労働分野でのゲノム情報を含んだ健康情報の取扱いの意義と課題について報告する。

 

 

 

2020年第9回公共政策セミナー

2021/03/03

本日第9回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:3月3日13時半~16時頃

◆発表者1.楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)

◆タイトル:研究へのパーソナル・データの提供とベネフィット・シェアリングに関する意識調査(案)の紹介

◆要旨:科学技術の研究や発展に貢献した人々は、その利益を共有するべき(ought to)であると述べ、科学的進歩の貢献者と利益を共有しない場合、その進歩は搾取である(Arnason& Schroeder, 2013)。研究分野における研究参加者との利益共有の議論は比較的新しく、あまり議論が深まっていない。他方、情報が資本的価値を持つようになり、個人に金銭や便益を提供する代わりにパーソナル・データやゲノムデータを収集し利活用し、収益を上げることが可能になった。例えば、レセプトデータや健診データなどが売買の対象となり、企業等が患者等の個人から得られたデータを活用して利潤を得ても、データ提供者とその利益が共有されることは稀である。そこで、研究へのゲノムデータやパーソナルデータの有償/無償提供やベネフィット・シェアリングに関する一般市民の態度を明らかにすることを目的にアンケート調査を計画している。本発表においては、ベネフィットと支払いに対する先行研究などを概観し、調査票(案)について紹介する。

◆発表者2.李 怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 助教)

◆タイトル: がんの網羅的ゲノム解析における倫理的課題の検討に向けて

◆要旨:近年、多様な疾患において、次世代シーケンサー(NGS)を活用し全エクソン領域または全ゲノム領域を網羅的に解析することで、ゲノム情報に基づく創薬やゲノム医療の実現が目指されている。がんは技術革新が著しい分野の一つであり、今般、日本においても、がんや難治性疾患の患者を対象に大規模な全ゲノム解析を実施する研究が開始され、データベースを構築することで、新たな診断や治療法の開発につなげるなど、臨床への応用が期待されている。同時に、こうした網羅的ゲノム解析を伴う研究・医療では、解析対象者の意向確認や結果返却の方針、二次的所見の取り扱いなど、検討すべき事項も多く存在する。そこで、本報告では、がんの網羅的ゲノム解析に関連した諸課題について、主に海外における先行研究や事例を紹介しつつ、基本的な論点の整理を試みたい

 

 

2020年第8回公共政策セミナー

2021/01/13

本日第8回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:1月13日13時半~16時頃

◆発表者1.高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)

◆タイトル:患者対象のFIH試験における倫理的課題の検討

◆要旨:治療法の開発プロセスの中で、動物実験などを経て初めてヒトを対象とする、いわゆるFirst-in-human試験(FIH試験)は、その治療法の安全性を確認することが主目的として行われる。一般的な薬剤の臨床試験ではFIH試験が健康な成人を対象とするのに対して、その治療法の特性によりFIH試験の対象が患者である場合、リスクベネフィットのバランスの検討はより複雑となる。本研究では、主に幹細胞研究における患者を対象としたFIH試験について理論研究を行い、FIH試験に参加した患者やステークホルダーに対して、臨床試験参加に関する質的調査を行う。本発表ではおもに調査の進捗について共有する。

◆発表者2.佐藤桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース博士後期課程)

◆タイトル:出生前遺伝学的検査のガバナンスの言説分析--用語「マススクリーニング」を使うのはもうやめよう--

◆要旨:出生前遺伝学的検査において「マススクリーニング」という実施のあり方は一貫して批判され、避けるべき対象となってきた。しかし実際に想定される「マススクリーニング」がどのような実施を指すのかについては、複数の可能性が考えられる。本発表では母体血清マーカー検査及びNIPTのガイドライン策定にいたる議論を精読することによって「マススクリーニング」
の含意を明らかにし、現状のガバナンス議論における問題点を整理する。


 

 

2020年第7回公共政策セミナー

2020/12/02

本日第7回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:12月2日13時半~16時頃

◆発表者1.張 有沙(東京大学大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程修士課程)

◆タイトル:日韓における新型コロナウイルス感染拡大対策アプリの社会的位置づけ:感染拡大防止とプライバシーリスクのバランスをめぐって

◆要旨:新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、スマートフォンアプリを活用する対策が世界各国で進められている。日本・韓国はともに、最初の大規模な感染拡大(第1波)の制御後、それまでの封じ込め対策から緩和対策への方向転換において、国による感染拡大対策アプリの導入がなされた。導入から5カ月が経過した現在、日本ではその有効性に疑問が呈されている。対して韓国は、アプリを含めた様々な政策によって感染者制御に成功した国として評価されている。日本と韓国のアプリは、その設計において「プライバシー保護」の観点から明確な違いがみられる。プライバシー保護への最大限の配慮をうたうCOCOAに対して、韓国のアプリは個人の同意を要しない追跡・特定・監視を可能にした。果たして、感染拡大防止のために、市民のプライバシーリスクをどこまで受容できるのだろうか。日本は2021年の東京オリンピック開催を目指し、更に市民の生活に踏み込んだ対策の検討が進められている。先んじて市民のプライバシー保護よりも感染拡大防止を優先させてきた韓国との比較を通じて、スマートフォンアプリを用いた日本の感染防止策のあり方を検討したい。本報告では、日本・韓国市民を対象とした質問紙調査を前に行った、両国のプリ導入の経緯、感染症対策法におけるプライバシー保護・人権保護の取り扱い、ITC政策実績の比較を共有する。

◆発表者2.須田 拓実(東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻修士課程)

◆タイトル:医療における「通訳」の役割と音声翻訳ツールへの期待・懸念

◆要旨:外国人医療における課題の一つに「言語」がある。医療者/医療機関は可能な限り多言語対応を行いつつ、より外国人患者の医療アクセスを認めるべきとする議論があったが、一方で医療者の負担が大きくなる等の課題が指摘されてきた。そのような中、音声翻訳アプリ・デバイスへの期待が高まり、医療現場での利用を想定したツールの開発・普及が推進されてきた。しかし、通訳倫理の中での「医療通訳者(人間)の役割」に関する議論を踏まえた、今後の医療通訳者と音声翻訳ツールそれぞれの在り方の検討は進んでいない。本報告では、医療通訳者の役割や音声翻訳ツールへの期待・懸念について、医師を対象に実施した調査の結果を共有し、音声翻訳ツールの主たるユーザーである医師が外国人患者対応で認識している課題やニーズを検討する。

 

 

2020年第6回公共政策セミナー

2020/11/11

本日第6回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:11月11日13時半~16時頃

◆発表者1.井上悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授)

◆タイトル:感染症法における「国民の責務」とコロナ禍

◆要旨:感染症への政策対応の一環として、市民個々人の果たすべき役割が改めて注目されている。公衆衛生における自助努力と強制との境界はときに曖昧である。また、こうした自発的な努力を求める姿勢は一方でvictim-blaming(被害者非難)につながりやすいとの指摘(Holland S. 2007)は、残念ながら現状にも当てはまっているように思える。この話題提供では、感染症法第4条の「国民の責務」の規定を素材に、我が国の感染症が辿ってきた経緯を、特に感染症法成立前後の制度の比較を軸に検討する。特に留意したいのは、共同体の一員としての個々人
にはどのような役割や責任が期待されるのか、という点である。感染症法は、過去の出来事の反省が込められた法律である(少なくともそう謳っている)。一方、当時想定していなかった点、十分に議論できていなかった点も見受けられ、コロナ禍に学ぶものも多くある。罰則の強化をめぐる議論もある中、改めて感染症と市民の役割を考える時間としたい。

◆発表者2.永井亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教)

◆タイトル:都道府県におけるCOVID-19に関する情報公表の実態と課題

◆要旨:厚生労働省は、2020年2月27日の地方自治体への事務連絡で、COVID-19を含む感染症法上の一類感染症以外の感染症に関わる情報公表について、エボラ出血熱の国内発生を想定して作成された「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針(以下、基本方針)」を踏まえ、適切な情報公表に努めるよう求めている。日本では、地方自治体が公表した情報や報道により生じたCOVID-19のスティグマが問題となっていると報告されているが(Yoshioka and Maeda,2020)、地方自治体がCOVID-19に関してどのような情報を公表しているかは明らかではない。本報告では、都道府県におけるCOVID-19に関する情報公表の実態について調査した結果を報告し、情報公表における課題について整理・検討を行いたい。

 

 

2020年第5回公共政策セミナー

2020/10/14

本日第5回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:10月14日13時半~16時頃

◆発表者1.北林アキ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)

◆タイトル:患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討

◆要旨:医薬品は、品目毎に厚生労働省の承認を受けて初めて製造販売、すなわち市場に出荷又は上市できるようになる。しかし、承認前に得られる副作用等の情報は一般的に限られることから、承認後も引き続き情報収集することが、副作用の早期発見や適正使用のために重要である。
収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、副作用の早期発見や適正使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んできている。しかし、諸外国に比べて、本邦においてはこうした取組みが進んでおらず、大きく後れを取っているのが現状である。
そこで、本邦でこのような状況になっている原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるため、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素について、文献調査及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。
本報告においては、患者から規制当局に副作用の情報を報告する制度に関する調査結果と共に、欧米の現状に関する調査を含めた今後の研究計画を共有したい。

◆発表者2.飯田寛(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)

◆タイトル:企業による従業員の新型コロナウイルス感染の公表をめぐる諸課題の検討

◆要旨:新型コロナウィルスの影響によって企業は事業継続のために在宅勤務や時差出勤の導入など様々な行動変容を強いられている。その全体像を把握するとともに、その行動変容が従業員に影響を与えていることがないのか、特にプライバシーやプライベートを侵害するようなことがないのか、その実態を把握し課題を整理することが研究目的である。
今回の発表では、感染症法等の法制度と企業との関係、新型インフルエンザ・結核・海外の扱いとの比較、先行研究の把握をしたうえで、企業の行動変容のひとつである感染者の公表について第一波と呼ばれる2020年初頭から5月末までの企業の感染者発表について情報を収集したのでその報告をおこなう。

 

 

2020年第4回公共政策セミナー

2020/09/09

本日第4回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:9月9日13時半~16時頃

◆発表者1.内山正登(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 客員研究員)

◆タイトル:ヒト受精胚へのゲノム編集に関する一般市民の議論への企画に向けて- ヒト受精胚のゲノム編集の研究利用および臨床利用のあり方に関する意識調査 -

◆要旨:ヒト受精胚へのゲノム編集の利用に関する議論は、専門家だけでなく多様なステークホルダーによる幅広い議論の必要性が指摘されている。ヒト異常胚のゲノム編集を行った研究の発表や、ゲノム編集された受精卵から誕生した双子の女児に関する報道等を受けて、一般市民を対象とした様々な意識調査が行われているが、受精胚の研究利用に関する調査や一般市民・患者・医師の異なるステークホルダーに対して同じ調査項目による調査は行われていない。そこで、2019年には一般市民を対象とした受精胚の研究利用に関する調査を実施し、2020年に一般市民・患者・医師の異なるステークホルダーに対して同じ調査項目による調査を計画している。2019年の調査では、一般市民を対象として受精胚に関する認識や受精胚の研究利用の許容性などの調査を行なった。また、令和2年度厚生労働科学特別研究事業では、生殖細胞系列へのゲノム編集の臨床応用に関する、一般市民・患者・医師の異なるステークホルダーの態度を明らかにする意識調査を行なう。調査にあたって、調査対象者の意見形成を支援する教育資材として、ゲノム編集の技術の理解、リスク-ベネフィット評価、ELSIに関する啓発動画の作成を行なった。これらの意識調査の結果や教育資材の開発を通して、ヒト受精胚へのゲノム編集に関する一般市民の議論への参画に向けた課題について共有する。

◆発表者2.楠瀬まゆみ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)

◆タイトル:研究におけるデータ主体への支払いとベネフィット・シェアリング

◆要旨: 正義の原理に基づけば、科学技術研究やその発展で得られた利益は、それに貢献した人々とともに共有するべき(oughtto)であり、科学的進歩の貢献者と利益を共有しない場合それらの進歩は搾取である、との指摘がある。この議論は、ベネフィット・シェアリング(利益共有)と呼ばれ、主に発展途上国や先住民族の遺伝資源等から得られる利益の配分に関して語られてきた。他方、医科学研究において研究参加者との利益共有の議論はあまりなされてこなかった。特に試料・情報のみを用いた研究の多くは、研究参加者の利他主義や無償原則に依存してきた。しかし、"data is the new oil."のスローガンのもと、パーソナル・データやゲノムデータを収集し、利活用し、収益を上げることが可能となり、情報の資本的価値が高まっている。そして、場合によっては、個人のヘルスケアデータやゲノムデータが、データ主体の知らないことろで利益を得るために売買されることがある。そこで本発表では、研究に利用されるデータに特に注目し、これまでヒト対象研究においてなされてきた研究参加者への支払いの議論を参照しつつ、研究を目的としたデータの収集と利活用のためのデータ主体への支払いの是非について、ベネフィット・シェアリングの視点から検討を行う。

 

 

2020年第3回公共政策セミナー

2020/07/08

本日第3回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:7月8日13時半~15時40分頃

◆発表者1.高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)

◆タイトル:患者対象のFIH試験における倫理的課題の検討

◆要旨:治療法の開発において初めて人を対象とする、いわゆるFirst in Human(FIH)試験では、治療法の安全性を確認することが主な目的となる。
一般的な薬剤の臨床試験ではFIH試験が健康な成人を対象とするのに対して、その治療法の特性によりFIH試験の対象が患者である場合、リスクベネフィットのバランスの検討はより複雑となる。なかでも、がん等のような生命に直結する疾患にくらべ、他に治療法がないが重篤ではない疾患での患者対象FIH試験については、そのリスクベネフィットバランスの検討が容易ではないと考えられるが、検討は殆ど為されていない。そこで本研究では、患者を対象としたFIH試験について理論研究を行い、その上でFIH試験に参加する患者やステークホルダーによる質的調査を行う予定である。今回は、主に質的調査に関する準備状況についての報告を行う。

◆報告2.須田 拓実(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻修士課程)

◆タイトル:コロナ禍における公衆衛生上の措置と外国人労働者

◆要旨:外国人の社会権の考え方や保障の範囲に関する論争は以前から見られ、国保と外国人の関係について国の制度の文言をめぐる裁判もあった。その背景には、在留資格の有無やその種類によって、労働資格や社会保障制度の利用に関する制約を受けやすいという要因がある。今回のコロナ禍では、職場の閉鎖・倒産に伴い在留資格を失った外国人労働者に向けて、既存の枠組みを例外的に流用することで、在留資格を延長し就労や社会保障制度の利用を可能にする取組が見られた。しかし、外国人労働者を想定したこのような措置は、日本人を想定した議論や対応より遅れていた。公的サービスの閉鎖に伴い「言語の壁」による問題も生じたと思われるが、コロナ禍での外国人労働者の医療へのアクセス状況や、感染の発生状況はあまり公になっていない。 
 今回のコロナ感染症の流行を踏まえて、以下の二点に特に注目している。ひとつは、外国人労働者を受け入れている職場の労働環境である。例えば、平時においても技能実習生のいる事業場の約70%で労働基準関係法令違反が見られ、健康診断や寄宿舎の安全基準に関する違反事項も含まれる。そのような環境下では、平時でも起こり得る課題に加え、外国人労働者の感染が疑われる場合の診断へのアクセスが担保されていたか疑問が残る。また、感染者に外国人労働者が含まれる場合の情報共有・公表に関しても、外国人であるが故の課題が浮上したのではないかと考えている。ふたつは、外国との人の行き来を再開する際、「労働力の確保」と「感染症対策」を如何に両立していくかという点である。感染症の水際対策として、外国人労働者に来日前の結核検査や健康診断が義務付けられてきたように、コロナ感染症が引き続き問題になる中で、どのような形で海外から労働者を受け入れていくかを検討する必要がある。本発表では、以上の問題意識と、それらに関する調査の暫定的な方向性を共有したい。

 

 

2020年第2回公共政策セミナー

2020/06/10

本日第2回公共政策セミナーが開かれました。

内容は以下の通りです。

◆日時:6月10日13時半~16時頃

◆発表者1.船橋亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)

◆タイトル:治療中止・差控えの法的責任について、改めて考える

◆要旨:治療中止・差控えの正当化は、刑法・医事法において重要な論点の一つである。2020年3月にドイツで公表された、臨床倫理に関する勧告「COVID-19パンデミックに関連する救急・集中医療における資源配分に関する決定」および、臨時勧告「コロナ禍における連帯と責任」とこれらの勧告に関する議論を契機として、日本における治療中止・差控えの法的責任に関する議論を振り返りながら、整理・検討を行う

◆発表者2.河合香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 修士課程)

◆タイトル:遺伝的特徴と結婚出産の助言ー遺伝医療の専門家はどう語ってきた

◆要旨:遺伝医療の専門家が、結婚や出産について医療従事者や患者・家族に対してどのように助言してきたかを検討する。戦前から今日まで本課題に関連して網羅的な文献調査を行ったうえで、80年代の文献として遺伝性疾患の医療者と患者に対して結婚出産に関する助言を行っている記述が見られる『患者と家族のためのしおり』(厚生省特定疾患難病の治療・看護調査研究班編,1982)、医療者向けの助言の記述がある『遺伝性疾患への対応』(大倉興司編,1985)を取り上げ、これらの内容と、現在「難病情報センター」(https://www.nanbyou.or.jp)で公開されている内容を比較し、その助言の変化を検討した。本セミナーではその結果と考察を発表する。

 

 

 
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