IMSUT
Menu
ホーム
研究室の紹介
メンバー紹介
著作物リスト
大学院進学について
お知らせ
リンク集
研究室へのアクセス
ENGLISH
お問い合わせ
IMSUT ORE
BARRIER FREE
東京大学医科学研究所公共政策研究分野

文字の大きさ フォントサイズを大きく フォントサイズを小さく

ページ | << | 1 | 2 | 3 | 4 | >> |  / 全63件 4ページ

日本遺伝カウンセリング学会誌に論文が掲載されました。(佐藤、武藤)

2021/12/07

D2の佐藤です。

このたび、日本遺伝カウンセリング学会に以下の論文が掲載されました。

佐藤桃子、神里彩子、武藤香織「出生前遺伝学的検査における用語「マススクリーニング」使用に関する言説分析」『日本遺伝カウンセリング学会誌』42:307-317, 2021

日本の出生前遺伝学的検査のガバナンスにおいて、「マススクリーニング」は一貫してやってはいけないことであり、回避すべきあり方だとされてきました。
しかし、「マススクリーニング」が具体的にどのような実施のことを指しているのかは、必ずしもはっきり定義されているわけではありません。
本研究では、1990年代に導入された「母体血清マーカー検査」と、2010年代に導入された「NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)」それぞれの実施方針を決めた会議の議事録と、方針に対する団体の意見書から、「マススクリーニング」がどのような実態を指して使われているか調査しました。
その結果、大きく分けて「すべての妊婦さんに強制される状態」という解釈と、「希望する妊婦さんが全員受けることのできる状態」という解釈の2つがあり、単に「マススクリーニング」ではどちらを指しているか判別できないことが分かりました。
この状況では議論が曖昧になってしまうため、今後は「マススクリーニング」という用語は使わず、「検査が強制かどうか」「対象者は誰か」の2点を明らかにして具体的に言い換えていくことを提案しました。

修士論文の内容を元にした論文で、先日の生命倫理学会でも追加の分析を加えて発表することができました。
今年、NIPTの方針について見直しが決まり、情報提供のあり方が議論されていく中で、その一助になれば幸いです。

 

 

遺伝性乳がん卵巣がん症候群に関する書籍にて、倫理的課題に関する章を執筆しました(李、武藤)

2021/11/19

助教の李です。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer: HBOC)について、日本の研究者・医療者から、最新の知見や臨床実践を発信する書籍が刊行されました。
本書にて、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)を論じた章を執筆いたしました。

Izen Ri, Kaori Muto. (2021)
Ethical Issues: Overview in Genomic Analysis and Clinical Context.
In: Seigo Nakamura, Daisuke Aoki, Yoshio Miki. (eds.)
Hereditary Breast and Ovarian Cancer: Molecular Mechanism and Clinical Practice. Springer, Singapore. (ISBN: 978-981-16-4520-4)
https://doi.org/10.1007/978-981-16-4521-1_17

ここ十数年の間に、がんゲノム診療や研究は大きく転換を迎えました。技術革新に伴い登場した新たな論点に加えて、時代を超えても通底する倫理的な原則や、患者さんや家族を支える意思決定支援のあり方について、国内外の研究蓄積を紹介しています。

前半では、遺伝学的検査、偶発的・二次的所見の取り扱い、ゲノムデータの共有に関する近年の議論、後半では、予防的切除の倫理、遺伝情報の守秘義務と結果返却、家族内におけるリスク告知といった、臨床における諸課題に関して、共同意思決定(SDM)のアプローチを紹介しつつ、まとめました。

大学院生時代から調査や検討を続けてきたテーマであり、個人的にも貴重な機会となりました。日本と海外の研究を結ぶ一助につながれば幸いです。

 

 

「医療AI」に関する厚労省研究班の報告書が公表されました。

2021/06/08

「医療AI」のELSI(倫理、法、社会課題)について、厚生労働省の研究班が2019年から活動しています。AI(人工知能)と「医療におけるAI」との距離感、研究開発から臨床応用まで、また文献検討から意識調査、市民行事まで多様な取り組みを展開してきました。ここではこれまでの報告書を掲載します(全文を以下の厚生労働省のウェブサイトから見ることができます)。

医療におけるAI関連技術の利活用に伴う倫理的・法的・社会的課題(2019、2020)

厚生労働科学研究費補助金政策科学総合研究事業(倫理的法的社会的課題研究事業)
報告1(2019年5月)https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27001/1
報告2(2020年8月)https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27612/1

医療AIの研究開発・実践に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究(2021)

厚生労働科学研究費補助金政策科学総合研究事業(倫理的法的社会的課題研究事業)
中間報告(2021年5月)未掲載

その他、ご関心がある方は以下の文献もご参照ください。

・井上悠輔, 菅原典夫
 医療への人工知能(AI)の導入と患者・医師関係
 -AIの「最適解」をどう考えるか
 病院 79(9) 698 - 703 2020年9月

・武藤香織, 井上悠輔
 医療AIと医療倫理-患者・市民とともに考える企画の試みから
 医学のあゆみ 274(9) 890 - 894 2020年8月

・井上悠輔
 医療AIの展開と倫理的・法的・社会的課題(ELSI)
 老年精神医学雑誌 31(1) 7 - 15 2020年1月

・参照:日本医師会第Ⅸ次学術推進会議報告書
 「人工知能(AI)と医療」
 医療AIの展開と倫理的・法的・社会的課題(ELSI)、2018年6月
 https://www.med.or.jp/nichiionline/article/006805.htm

 

 

医療通訳の役割、医療AIと通訳の接点に関する調査報告の公表

2021/05/27

2018年度から、厚生労働省の研究班として、医療AI(人工知能、拡張機能)をめぐる倫理、法、社会的な諸課題の検討を行っています。このたび、医療現場で「人」「機械」が果たす役割を考えるための一つの視点として、患者と医療者をつなぐ「言語」、特に外国人医療における通訳の方の役割と未来のあり方に注目して、調査を行いました。

『医療通訳の役割・多言語音声翻訳ツールに関する意識調査:医師・医療通訳者を対象とした質問票調査を通じて』

この報告書には大きな特徴がいくつかありますが、特に次の二つを挙げます。

まず、この調査では、200名を超える全国の医療通訳の方々のご厚意により、医療現場における通訳者の役割や、言語処理の機械化・自動化の影響に関する回答を得ました。その際、全9言語(日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、タガログ語、ベトナム語、インドネシア語)の設問を用意しました。日本語の設問に対応できない方、非英語に対応する通訳の方にも多く協力いただきました。これらの方々に記載いただいた自由回答もすべて日本語に訳して巻末に収載しています。

また、この調査では300名を超える医師からも回答をいただきました。医療現場での音声機械翻訳の主たるユーザーは医療者です。そこで医師の視点からも、通訳者の役割やAIツールへの期待や懸念について調査を行い、通訳者の回答と比較をしてみました。

検討をすすめるなか、調査をする我々は、医療通訳に従事する方々の活動がいかに多様で複雑なものであるか、知らなかったことを痛感しました。かなり断片的ではありますが、通訳者の方々が何を重視し、何を望んでおられるかについても、調査の柱として検討することとしました。

この報告書のほか、近日中に医師の回答に注目した論文も発表される予定です。またここで紹介させていただきます。

 

 

公衆衛生倫理に関する著作の無料公開について(井上)

2021/01/18

勁草書房より、公衆衛生の過去の制度の展開に関する拙著の一部が、無料で公開されることになりました。

現在、新型コロナウイルス感染症への対応をめぐって、国会で法改正に向けた議論が始まっています。歴史は、過去の反省をするうえでも、今後の中長期的な論点を考えるうえでも、多くの検討材料を示してくれます。この公開された部分は、「伝染病予防法」や「エイズ予防法」、「らい予防法」など、今日の感染症法の議論の前身や背景になった、法律やその経過を紹介した部分になります。なかなか類書がない中、執筆には苦労した記憶があり、無論、まだ未完の作業であるとも思っています。

過去の法律には強権的で今日では許容されない内容も多くあります。ただ、公衆衛生の倫理として考えると、どの価値に重きを置いていたか、どの価値を優先して考えていたか、という整理が重要になります。同様の視点は、今日の感染症法についてもいえます。また、過去の議論に学ぶならば、感染症対策における「予防」対応にどのような手順を設けるか、個人への差別的な対応について実際にどのように取り組むのか、感染症法の成立時に抜けていた論点もあるように感じています。今ちょうど感染症法や検疫法、新型インフルエンザ等特措法のあり方が議論されていますが、いま議論されている課題、あるいは議論されなかった課題が、この後の数十年にわたる社会を規定するかもしれない、そのような思いで日々の出来事に向き合うつもりです。

https://keisobiblio.com/2021/01/28/atogakitachiyomi_nyumoniryorinri3_2/

その他、この章では予防接種、「優生」、精神衛生をめぐる諸制度の展開が検討されています。

https://www.keisoshobo.co.jp/book/b210750.html

 

 

 

Journal of Human Genetics に論文が掲載されました(飯田、武藤)

2020/12/11

D2の飯田です。

このたび、Journal of Human Genetics に以下の論文が掲載されました。

Hiroshi Iida, Kaori Muto. Japanese insurers' attitudes toward adverse selection and genetic discrimination: a questionnaire survey and interviews with employees about using genetic test results. Journal of Human Genetics. 2020 Nov. DOI: 10.1038/s10038-020-00873-y.

https://www.nature.com/articles/s10038-020-00873-y

1990年代以降、海外では遺伝学的検査結果利用について生命保険は注目される分野でした。検査結果によって将来病気の発症が予想される人が保険の加入が出来ないという差別に陥るのではないか、一方で生命保険会社は人々が検査結果を隠して保険に加入するという「逆選択」によって収益が悪化するのではないかということが危惧されてきました。しかし、日本においては現在遺伝学的検査結果の利用に関する規制はなく、生命保険会社もここ20年ほどこの問題について沈黙を保っています。

そこで、日本の生命保険会社の態度を明らかにすべく、生命保険会社社員100名への無記名式アンケート調査とその中での協力者9名へのインタビュー調査を実施いたしました。その結果をもとに、本論文では、生命保険会社社員が遺伝学的検査利用の規制や逆選択についてどのように考えているのかについて考察しました。

日本での生命保険会社の遺伝学的検査利用に関する規制等の作成にあたって、有識者との議論の活性化し、世間の理解を得ることに繋がればと考えております。

 

 

「LAW&PRACTICE」に刑事医療過誤に関する論文が掲載されました(船橋)

2020/09/24

特任研究員の船橋です。

このたび、「LAW&PRACTICE」に刑事医療過誤に関する以下の論文が掲載されました。 

 
船橋亜希子
「刑事医療過誤」をめぐる20年―医療者と法律家の相互理解に向けた議論の整理ー
LAW&PRACTICE14号, 47 - 70 (2020)
 

本研究分野の学際的研究環境での研究生活も早3年が経過し、これまで自身が扱ってこなかった手法に挑戦しました。

公共政策研究分野に所属していなければ、このような研究には挑戦できなかったと思います。

不十分であったとしても、現段階での検討を形にすることにいたしました。

現在の私の研究人生にとって、大事な論文となりました。

 

こちらからダウンロードが可能です(直接ダウンロードされます)。
https://lawandpractice2018.jimdofree.com/app/download/9220380676/14-3.pdf?t=1602141977

 

 

「病院」に人工呼吸器トリアージに関する論文が掲載されました(船橋)

2020/08/01

特任研究員の船橋です。

このたび、「病院」にパンデミック下における人工呼吸器トリアージに関する以下の論文が掲載されました。 

 
一家綱邦、船橋亜希子
COVID-19パンデミック下の人工呼吸器トリアージ問題にどう取り組むべきか
―学際的協働に向けた医事法学からのアプローチ
病院79巻8号, 610 - 616 (2020)
 

今年5月の緊急事態宣言下、COVID-19の感染拡大が懸念され、医療者が未曽有の事態への対応を迫られる中、

法学者の取り組むべき課題、自分自身がアプローチできるテーマを考えて、重症患者が増大し、人工呼吸器等が不足した場合に迫られるトリアージ判断について考察しました。

一家(医事法学、生命倫理学、比較法研究対象国:アメリカ)、船橋(刑法学、医事法学、比較法研究対象国:ドイツ)という分担で執筆し、

国内で問題が現実化する前に公表したいという強い思いから、限られた時間の中で、論旨や結論については、何度も何度も議論を重ねました。

多彩な先生方にもご意見・ご批判を賜りましたこと、ここで改めて御礼申し上げます。

 

このような判断が必要になる事態に至らないことを切に願います。

 

 

新型コロナウイルス感染症の行動変容に関する論文をPLOS ONEに公開しました(武藤)

2020/06/11

 東京大学医科学研究所 武藤香織教授と慶應義塾大学商学部 山本勲教授は、慶應義塾大学経済学部 長須美和子特任講師、国際医療福祉大学 和田耕治教授、早稲田大学大学院政治学研究科 田中幹人准教授と共同で、日本の一般市民を対象に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐための行動変容に関する質問紙調査を実施しました。6月11日にPLOS ONE誌に公開されました。

 日本では、新型コロナウイルス感染症は、感染症予防法で「指定感染症」と位置付けられており、新型インフルエンザ特別措置法ではまん延の恐れがある場合に、場所の使用制限や行動自粛を要請することが可能です。日本では、「市民の行動変容」を求める政策をとっていましたが、そこで、この調査の目的は、日本の人々がいかにして、またいつから行動を変えたのかを明らかにすることとしました。

 調査方法は、日経マクロミル社のパネルを用いて、労働力調査と同じ分類の20歳から64歳までの11,342名から回答を得ることができました。調査期間は、2020年3月26日から28日まででした。その結果、85パーセントの回答者は、政府が要請している行動変容を実践していると回答しました。多変量解析の結果、男性よりは女性、若年層よりは高年齢層のほうが実践をしていると回答した割合が優位に高い傾向にありました。例えば、頻回な手洗いは、全体で86%の回答者が実践していると回答していましたが、女性の92%は、40歳以上の人々の87.9%が回答していました。こうした予防的な行動に最も大きな影響を与えた出来事は、2020年2月上旬のダイヤモンド・プリンセス号内の集団感染と答えた人が最も多く、23%にのぼりました。政府や都道府県からの情報は、全体の60%が摂取しており、信頼度も他の情報源に比べると高いものでした。

 しかしながら、全体の20%の回答者は、3月下旬においても予防的な行動を行っていないと回答していました。男性、30歳以下、独身、低所得、飲酒習慣または喫煙習慣、外交的な性格といった属性が関与していることがわかりました。第1波において日本で感染拡大を防止するためには、まだ予防行動を始めていない人を啓発することが重要との示唆を得ました。

 

 

『社会志林』に「非発症保因者の経験」に関する論文が掲載されました(木矢)

2020/02/19

特任研究員の木矢です。

このたび、『社会志林』に非発症保因者に関する以下の論文が掲載されました。

 

木矢幸孝

非発症保因者の積み重ねてきた経験

――恋愛・結婚・出産の語りをめぐって

『社会志林』第66巻第3号, 195-217.(2019.12)

 

遺伝/ゲノム医療における技術の進展は、確定診断・出生前診断・非発症保因者診断等といった医療技術を可能にし、私たちに遺伝学的リスクを考慮する「生」を歩ませています。今後、人々は遺伝学的リスクとますます向き合うことになると考えられますが、実際に遺伝学的リスクによってどのような課題や問題が浮上するのでしょうか。

これまでの研究では、遺伝学的リスクを有する個人の葛藤や苦悩が主として検討されてきました。ただ、個人の生における一時点の諸問題を取り上げることが多く、遺伝学的リスクに対する問題意識の移り変わりとその帰結が明らかではありませんでした。

そこで本稿では、遺伝学的リスクを有する個人、「非発症保因者」(以下、保因者と略記)に焦点を当て、10代に告知を受けてから30代で結婚するまでの時期における「恋愛・結婚・出産」の観点から保因者一人の経験を詳細に検討しました。

結果、保因者は遺伝学的リスクに悩みながらも試行錯誤し、アイデンティティを再構築していることが分かりました。同時に、遺伝学的リスクに対して結婚や出産を諦める位置から結婚し出産を意識するところまで変化があることが明らかになりました。

本稿では、アイデンティティの再構築や遺伝学的リスクに対する捉え方の変化を詳しく把握することはできましたが、一人の事例の検討にとどまっています。今後はより普遍性のある議論に接続していければと考えています。

 

 

「生命保険経営」誌に論文が掲載されました(飯田、武藤)

2020/01/08

D1の飯田です。

このたび、「生命保険経営」に以下の論文が掲載されました。 

飯田寛、武藤香織
英国の「遺伝学と保険に関するモラトリアム協定」
生命保険経営第88巻第1号、26-41(2020.1)

発症前遺伝学的検査によって将来の発症が予測される人々が生命保険に加入できないもしくは高額の保険料を払うことは差別だとして海外では保険会社での発症前遺伝学的検査の利用を制限しています。一方で日本では今のところこのような規制がありません。

そこで、本稿においては、今後の日本の生命保険での発症前遺伝学的検査の利用に関するの議論の参考にするために、英国の政府と保険業界の取決めという形態での発症前遺伝学的検査結果の利用を制限した議論の経緯について文献調査および英国保険協会へのインタビュー調査をおこないました。英国を対象にした理由は医療制度が国営であり、日本の皆保険制度と似ていることから、生命保険の死亡保障を対象に議論がなされているからです。英国での早い議論の展開や、政府と業界の取決めという形態とした背景、発症前遺伝学的検査の適用を判断する仕組みなどの要点を整理し考察をおこないました。

英国と日本での環境や考え方の違いは考慮しなければなりませんが、今後の日本での議論の活性化の一助になればと考えています。

ご関心のある方はご一報ください。

 

 

「日本遺伝カウンセリング学会誌」にダウン症候群に関する論文が掲載されました(神原)

2019/11/11

学術支援専門職員の神原です。

このたび、日本遺伝カウンセリング学会誌に下記の論文が掲載されました。

 

神原容子、竹内千仙、川目裕、持丸由紀子、佐々木元子、三宅秀彦

「成人期ダウン症候群において必要とされる情報提供と家族支援のあり方」

日本遺伝カウンセリング学会誌、第40巻3号、101-108頁(2019年10月)

 

ダウン症候群のある方々の平均寿命の延長に伴い、ダウン症候群のある成人に対する健康管理と合併症治療の重要性は増しています。

成人期のダウン症候群のある方とその家族を対象に開催した「大人のダウン症セミナー」において、参加者を対象に質問紙調査を行い、情報提供と家族支援のあり方について検討を行いました。

その結果、ダウン症候群のある方の親は、成人後の認知機能と認知症、情緒と行動異常などに高い関心があることが明らかになりました。

このような、セミナーの取り組みは、家族が望むダウン症候群に関する情報提供の役割を果たし、今後の情報提供の場として有用であると考えられました。

 

 

「薬理と治療」に臨床研究法に関する論文が掲載されました(船橋、井上)

2019/09/02

特任研究員の船橋です。

このたび、「薬理と治療」に臨床試験法に関する以下の論文が掲載されました。 

 
船橋亜希子、井上悠輔
臨床研究の「記録」に関する新しいルール
―臨床研究法をいかに理解し、いかに守るべきか?―
薬理と治療47巻Suppl 1, 37 - 41 (2019)
 

データ不正事案を背景に成立した臨床研究法は、データの「保存」義務に違反した場合に、50万円以下の罰則を設けています。

そこで、本稿においては、診療・研究に関する記録の保存に関する規制について整理・検討を行いました。

本稿に取り組む中で、改めて、臨床研究法の定義の問題、そもそもの理解の難しさ、それに伴う遵守の難しさを痛感し、そこから、副題をつけました。

 

倫理指針による規制から、臨床研究法という法律による規制に移行したことは、どのような波及効果を有するでしょうか。

今後の動きにも、引き続き注視する必要があると考えています。

 

 

 

李 怡然さんが日本保健医療社会学会「園田賞」を受賞しました

2019/03/29

 日本保健医療社会学会では、当該年度に発行された機関誌『保健医療社会学論集』に掲載された若手研究者による論文(総説、原著、研究ノート)のうち、著者(共著の場合は筆頭著者と読みかえる)の年齢が35歳未満であるか、また研究歴が10年未満とみなせるものを対象に、学会奨励賞として園田賞を授与しています。

 このたび、『保健医療社会学論集』第29巻1号に掲載された「ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」」(研究ノート)が園田賞に選ばれ、当研究室所属の李 怡然大学院学際情報学府文化・人間情報学コース博士課程3年)が受賞することになりました。授賞式は、2019年5月に開催される、第45回日本保健医療社会学会大会30周年記念大会にて執り行われます。

 本選考に携わって下さった関係者の皆様に心から御礼申し上げます。

李 怡然・武藤 香織
ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」『保健医療社会学論集』29(1): 72-82, 2018.

 (掲載から一年半を経過した時点でJ-STAGEにて公開される予定です)

 

 

 

医学研究の倫理をテーマにした単行本が刊行されました(『医学研究・臨床試験の倫理 わが国の事例に学ぶ』)

2019/02/10

医学研究・臨床試験の倫理 わが国の事例に学ぶ』が日本評論社より刊行されました。編者を井上が担当したほか(国立がん研究センターの一家綱邦さんとの共編)、執筆にも船橋他の研究室関係者、そして月例で開かれている研究倫理研究会のメンバーが多く参加しています。企画から刊行まで3年がけの作業でしたが、奇しくも臨床研究法の施行の年に刊行されることになりました。

この本では、わが国で、医学研究での「被験者保護」「研究倫理」が争点となった、15の出来事を検討しています。海外の出来事や事例が紹介される機会は多いのですが、この日本でこれまでどのような出来事が議論されてきたのか、また単にその事案の問題としてではなく、そこから今日の我々が学ぶべき課題は何か、このような視点からアプローチした類書はありませんでした。

患者を対象とする研究のほか、軍による研究、刑務所や乳児院での研究、最近のものでは産学連携をめぐる事案、研究論文の不正などが登場します。巻末には海外の議論と比較できるよう、整理した年表も付しました。改めて俯瞰すると、「問題」が認識される時代背景にも一定の潮流があり、「人を対象とする研究」を今後どのように検討していくべきか、新たな議論の地平も見えてきました。1月には本書の書評会があり、香川知晶さん(山梨大学)、松原洋子さん(立命館大学)、坂井めぐみさん(同)より貴重なコメントをいただき、議論することができました。刊行に至るまで多くの方々からいただいた助言、激励に感謝申し上げます。読売新聞ヨミドクター、日本臓器保存生物医学会の刊行誌(Organ Biology vol.26 No.1)などに書評が掲載されています。

 

 

PLOS ONE誌に臨床試験・治験参加経験のある患者の意思決定の背景に迫る論文が掲載されました(武藤)

2019/01/31

治験に参加した経験がある患者2,045名を対象とした質問紙調査(株式会社インテージのパネルを利用)と、認定NPO法人ディペックス・ジャパン1が管理する「臨床試験・治験参加者の語りデータベース」2に収載されている語りのデータも併用して分析し、患者が臨床試験・治験3に参加するまでの意思決定の過程を分析した結果が東部標準時2019 年 1 月 29 日午後2時にPLOS Group の科学誌 PLOS ONEの電子版に掲載されました。

質問紙調査の結果から、多くの患者は、医療者から臨床試験・治験に関する詳細な情報を受け取る前に、すでに「インフォーマルな意思決定」をしており、短期間のうちに(概ね2~3日間)、誰にも相談せずに参加の決断をしている傾向が明らかになりました。また、語りのデータの分析から、患者の臨床試験への参加にあたっての態度は、①能動的参加(医療者の考えを引き出し、積極的に同調する)、②受動的参加(医療者の提案をそのまま受け入れる)といったタイプに分類され、熟慮のうえで意思決定をしている状況とは言いがたいものでした。また、著者らは、患者が臨床試験・治験への参加判断をするまでに4つの段階を経るのではないかと考えました(臨床試験・治験に関する最初の情報に接する段階、「インフォーマルな意思決定」をする段階、臨床試験・治験に詳しい医療者からの詳細な説明に接する段階、「フォーマルな意思決定」をする段階)。そこで、著者らとしては、臨床試験・治験のインフォームド・コンセント5を担当する医療者は、熟慮するきっかけを促すためのリストの作成、4日以上の熟慮期間の確保に留意すべきではないかと結論づけています。

本研究成果は、国立がん研究センター生命倫理・医事法研究部の 中田 はる佳(なかだ はるか)研究員、群馬パース大学保健科学部の 吉田 幸恵(よしだ さちえ)講師、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの 武藤 香織(むとう かおり)による共著論文です。

※1 認定NPO法人ディペックス・ジャパン

オックスフォード大学で作られているDIPEx(Database of Individual Patient Experiences)をモデルに、日本版の「健康と病いの語り」データベース」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。

※2 臨床試験・治験参加者の語りデータベース

認定NPO法人ディペックス・ジャパンの「健康と病いの語りデータベース」内にある、臨床試験・治験に参加した人、参加できなかった人、参加を断った人など、なんらかの形で臨床試験・治験に関与したことがある40名の語りが収録されたデータベース。その語りの一部はウェブ上で公開されている。

※3 臨床試験・治験

新規の医薬品・医療機器開発や、手術方法等の安全性や有効性を確認するために実施される、健康な人や患者を対象とした臨床研究を臨床試験と呼ぶ。このうち、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、医薬品・医療機器等の製造販売承認を得るために実施される臨床試験を治験と呼ぶ。

※4インフォームド・コンセント

臨床試験・治験において、研究対象者が研究内容について十分な説明を受け理解したうえで、その研究参加に関して意思決定する過程のこと。

 

 

Journal of Human Genetics誌にがん遺伝子パネル検査に対する態度に関する論文が掲載されました(永井・李・武藤)

2019/01/11

永井です。Journal of Human Genetics誌にがん遺伝子パネル検査に対する態度に関する論文が掲載されました。

 

Akiko Nagai, Izen Ri & Kaori Muto

Attitudes toward genomic tumor profiling tests in Japan: patients, family members, and the public

Journal of Human Genetics (2019)

https://www.nature.com/articles/s10038-018-0555-3

 

 がんに関連する遺伝子を網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、医療への応用が急速に進んでいます。日本では、2018年にがんゲノム医療の中核を担うがんゲノム医療中核拠点病院が指定されるなど、がんゲノム医療の推進に向けた体制整備が進められています。海外におけるがん患者を対象とした研究では、がん細胞のプロファイリングへの関心が高く、二次的所見の開示を希望する人が多いけれども、心理的負担や健康保険への影響などの懸念も示されたと報告されています。しかし、日本では、がん遺伝子パネル検査の認知度や同検査に対する態度に関する調査はほとんど行われておらず、がん患者やがん患者の家族が、がん遺伝子パネル検査に対してどのような期待や懸念を持っているかは明らかではありませんでした。そこで、がん患者やがん患者の家族、一般市民を対象として、2018年3月と5~6月にがん遺伝子パネル検査の認知度および同検査に対する態度について調査を行いました。

 調査の結果から、がん遺伝子パネル検査の認知度は、がん患者・がん患者の家族・一般市民のいずれのグループでも低いけれども、がん患者とがん患者の家族は一般市民よりも同検査のベネフィットを高く認識していることが明らかになりました。がん患者の家族は、がん患者よりもがん遺伝子パネル検査の生殖細胞系列の結果を共有したいと考えている人が多いことがわかりました。がん遺伝子パネル検査の主な検査対象となる進行がんの患者は、心理的な負担から治療選択や生殖細胞系列の結果の共有について意見を述べることが難しい可能性があることから、がん遺伝子パネル検査はアドバンスド・ケア・プランニングと一緒に提示されるべきと考えます。

 2019年度よりがん遺伝子パネル検査は保険適用されることとなり、同検査への関心や態度に影響を与える可能性があります。今後もがん遺伝子パネル検査に対する態度について調査を行い、がんゲノム医療の普及に向けた課題について検討していく必要があると考えています。

 

■プレスリリース文は下記をご覧ください■

がん遺伝子パネル検査に寄せる期待と懸念とは?

-がん患者・一般市民を対象としたインターネット調査の結果より-

http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/files/190212jhg.pdf

 

 

保健医療社会学論集に、ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」について考察した論文が掲載されました(李・武藤)

2018/08/20

D3の李です。

保健医療社会学論集に以下の論文が掲載されました。

李 怡然・武藤 香織
ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」
『保健医療社会学論集』29(1): 72-82.

 (掲載から一年半を経過した時点でJ-STAGEにて公開される予定です)

 ヒトゲノム研究や遺伝医療において、被検者は遺伝学的検査を受けて自らの遺伝情報を「知る」ことだけでなく、検査を受けずに「知らないでいる」選択をすることも、尊重されるべきだという規範があります。この「知らないでいる権利(the right not to know)」は、1990年代に米国の遺伝性疾患の患者・家族が主張したことが出発点となり、国際機関や各国のガイドラインに明文化されることで、確立されました。

 しかし、2000年代半ば以降、次世代シーケンサーの登場によるゲノム医学の技術革新を経て、今日の患者や家族をとりまく環境は大きく変化を迎えています。そこで本稿では、技術革新や医療の変化に応じて、「知らないでいる権利」をめぐる議論にどのような変遷が生じたかを整理し、現代的な意義はあるのかを考察するため、文献調査を行いました。

 2010年代を境に、“actionable”(「対処可能」である)、すなわち医学的に確立された予防法や治療法があるということを根拠に、患者や家族が発病リスクを「知る」ことを推奨する流れが強まっていることが分かりました。さらに今日、がん遺伝子パネル検査が臨床実装されることで、遺伝性疾患の家系員に限らず一般のがん患者やその家族も含め、遺伝性疾患の発病リスクを予想外に「知らされる」事態が生じうると予想されます。

 ゲノム医療が日常の診療として普及していくなかで、医療者の規範だけでなく、実際に検査を受けられる患者さんやご家族がどのような態度をもっているかを、合わせて明らかにしていきたいと考えています。

 

 

BMC Medical Ethics誌に家族のデータ共有への倫理的配慮に関する論文が掲載されました(高島・武藤)

2018/06/19

武藤です。客員研究員の高島響子さんが第一著者となって、家族丸ごとのデータ共有への倫理的配慮を検討した論文がBMC Medical Ethics誌に掲載されました!

Kyoko Takashima, Yuichi Maru, Seiichi Mori, Hiroyuki Mano, Tetsuo Noda, Kaori Muto

Ethical concerns on sharing genomic data including patients’ family members

BMC Medical Ethics 2018;19:61
https://doi.org/10.1186/s12910-018-0310-5

 近年、ヒトゲノム解析研究で得られたデータは、研究を加速させるため、できるだけデータ共有を進めることが国内外で強く推奨されています。特に難病やがんの研究では、疾患の原因や特性を探究するため、患者だけでなく、血縁者を中心とした家族の協力も得て解析したデータも一緒に公開することがあります。

 研究者にとって、家族丸ごとのデータの科学的な価値は高い反面、幅広く共有されることにより、個人のみならず家族を識別されるリスクは高まります。また、データ共有は、研究を推進するうえで必要な営みではありますが、一般の人々には余り知られていないのではないでしょうか。

 そこで、本論文では、一般の人々へのアンケート調査結果を手がかりに家族丸ごとのデータ共有に関して、どのような倫理的配慮が求められるかを検討しました。

 なお、この論文の検討過程において、NBDCヒトデータベースには、家族丸ごとのデータ提供があった場合、その利用希望者に対して、「学術目的による利用以外での血縁関係の有無の探索や家系の同定及びそれらを試みる行為を禁止する」というルールの適用を開始して頂きました。

 

 

日本公衆衛生雑誌に、本人通知制度の実態と住民票を用いた予後調査への影響を検討した論文が掲載されました(永井・井上・武藤)

2018/06/15

 特任助教の永井亜貴子です。このたび、日本公衆衛生雑誌に下記の論文が掲載されました。

永井亜貴子、武藤香織、井上悠輔

「本人通知制度の実態と住民票を用いた予後調査への影響の検討」

日本公衆衛生雑誌 2018; 65(5): 223-232.

DOI:10.11236/jph.65.5_223

https://www.jsph.jp/member/docs/magazine/2018/5/65-5_p223.pdf

 日本には学術研究のための生存確認に使用できる死亡統計データベースがないため、コホート研究や疾患登録などで研究対象者の生存に関する情報を収集する場合、住民基本台帳法に基づき、住民票照会が行われています。第三者による住民票の写しの請求については、近年、一部の市町村において住民票の写しや戸籍謄本などを代理人や第三者に交付した場合に,交付の事実を本人に通知する制度(本人通知制度)が導入されていますが、同制度の導入状況は明らかではありませんでした。本稿では、全国の市町村を対象とした調査により本人通知制度の実態を明らかにし、バイオバンク・ジャパン(BBJ)で実施した予後調査の結果とともに分析することで、本人通知制度が学術研究を目的とした住民票の写しの利用に与える影響について検討しました。

 本人通知制度に関する調査の結果から、約3割の市町村が本人通知制度を導入していること、学術研究目的の住民票の写しの交付について、ほとんどの市町村が一定の判断基準を持っておらず、担当者ごとに住民基本台帳事務処理要領をもとに交付可否の判断をしていることが分かりました。本人通知制度の導入とBBJの予後調査で行った住民票の写しの交付請求の可否の結果の間には有意な関連はありませんでしたが、交付不可とした市町村の理由の一部に、本人通知制度の開始に伴う判断基準の見直しが挙げられていました。

 日本では、これまで多くのコホート研究や疾患登録が住民票照会により予後情報を取得し、有用な成果を得てきました。今後も疫学研究や行政情報の利用の意義や成果について、社会に向けて情報発信を行うとともに、学術研究目的の住民票の写しの交付判断に必要な基準を示すなどの市町村を支援する取り組みを行う必要があると考えられます。

 

 
読み込み中